Archives アーカイヴスⅠ 【Dolls〜人形】

Kestner All-Bisque Mignonette with Square-Cut Teeth
ケストナー スクエアカット前歯のオールビスクミニョネット

c1890 Germany
1890年頃 ドイツ
高さ:14.5cm ヘッドマークなし
 
オールビスク。5ジョイント。足はブルーの靴下にストラップ1本とリボン付きの靴型のモールドが黒に着色されている。ブラウンのスリーピングアイ、スクエアカット前歯(上2、下1)のオープンマウス、オリジナルモヘアウィッグ。首のジョイントはキッド(仔ヤギ革)が残る状態の良いトルソ。衣装は下着も含め全てオリジナル。シルクに経年の劣化が見られるが概ね良い状態である。
 
ミニョネットサイズの人形はその小ささゆえ顔の描きや義眼のセッティングがベベタイプの人形に比べて困難で、整った出来映えの作品が比較的少ない。この作品は顔の出来も良く、フランス市場を意識したシルク衣装とストローのボンネットを着用した上手のドイツ製ミニョネットである。額右側(表面のみ)に5mm程度の薄いヘアラインあり。
Boissierお菓子入れは別売りです
*SOLD*

KATAN DOLL 48cm
天野可淡カタンドール48cm

1982 Tokyo Japan
1982年 東京 
サインなし 約48cm
 
人形作家天野可淡(1953-90)による球体関節の少女人形。カタンドール。1982年吉祥寺PARCOパルコギャラリーの個展において新作として出品された。石塑(石粉粘土)に油彩顔料で着色。作家独自の手法によるガラスを嵌めた眼。歯はオパールの原石。ヘッドに直接貼り付けた人毛は作家自身の毛髪を使用。アンティークレースを作家が染色したコスチューム(以上、作家本人より直接伝聞)。関節は13箇所。横たえてポーズを取る人形として制作された作品で、肩関節と股関節の球体受け皿をボディ前面に傾けた変形ジョイント。
 
着色面が接触する球体関節の一部に顔料の剥落、ゴム紐の留め具を仕込んだ手足に金属からの錆が見られる。経年により関節を繋ぐゴム紐が弛緩しポーズを固定できない。またゴム紐の劣化により左手首が外れている。当店では作品のオリジナル性を尊重し現状維持で保存しているが、ゴム紐の劣化については当店にて新品に交換、引き直しは可能(作家が選んだオリジナルの紫色のゴム紐は失われる)。
*SOLD*
 

Simon & Halbig 890 All-Bisque Mignonette
シモン&ハルビック890オールビスクミニョネット

c1890 Germany
1890年頃 ドイツ
高さ:13.5cm 後頭部に刻印:o
 
オールビスク。5ジョイント。足は黒い靴下にストラップのある茶色の靴が描かれている。ブルーのスリーピングアイ、オープンマウス、オリジナルのモヘアウィッグ。アンティークの赤い水玉のコットンドレスはボタンで着脱可能。縫い付けの下着はおそらくオリジナルである。マークは無いがシモン&ハルビック作品(890型)と思われる。
 
ミニョネットサイズの人形はその小ささゆえ顔の描きや義眼のセッティングがベベタイプの人形に比べて困難で、整った出来映えの作品が比較的少ない。この人形は顔の出来、肌の焼きも良い。口元からのぞく歯、爪や手のひらのシワまで丁寧に作られた小さな手は愛らしく、非常に良好な状態である。
*時計型テープメジャー(*SOLD*)、本型ボックスは別売りです
*SOLD*

F. Gaultier Bisque Musical Marotte
F. ゴーティエ・スクロール ビスクヘッドオルゴールマロット

c1880 France
1880年頃 フランス 
長さ:39cm
刻印:3/0、F.G(スクロール)
 
ビスクショルダーヘッド、クローズドマウス、固定されたブルーのペーパーウェイトアイ、ピアスされた耳、ラムスキンウィッグ、シルクの道化師コスチュームはすべてオリジナル。可動のオルゴールは木製ハンドル含め良好な状態。経年によるシルクドレスの傷みと鈴の欠損あり。
 
元来「マロット marotte」は、宮廷道化師(愚者)が手に持っている顔の付いた笏丈を指す。道化に扮した気品ある貴婦人のような色白肌のゴーティエのビスクヘッドが付いたマロットである。ハンドルを持ち軽く振ると人形が回転して衣装が広がりオルゴールが鳴る仕組みである。19世紀後期の富裕層の子どもだけでなく大人も愉しんだオブジェである。
*SOLD*

Armand Marseille 18cm All-Bisque Mignonette
アーモンド・マルセル18cmオールビスクミニョネット

c1895 Germany
1895年頃 ドイツ
高さ:18.0cm 後頭部に刻印:Germany A 12/0 M
 
オールビスク。5ジョイント。足は黒い靴下に4つのストラップがある茶色の靴が描かれている。ブラウンのスリーピングアイ、オープンマウス、オリジナルのモヘアウィッグ。縫い付けの衣装は下着も含め全てオリジナル。飾りのシルクリボンのみ経年劣化がある他は全て時代を感じさせない極めて良い状態。
 
ミニョネットサイズの人形はその小ささゆえ顔の描きや義眼のセッティングがベベタイプの人形に比べて困難で、整った出来映えの作品が比較的少ない。人間の子どものようなリアルな顔立ち、ふっくらとした手指の造形など迫力の18cmサイズのオールビスク・ドールである。
 
大量生産されたアーモンド・マルセルの人形は、アンティークとしての稀少性に欠けると云われるが、オールビスクのミニョネット作品は極めて珍しい。この作品は刻印からTiny Tot(タイニートット)モデルと思われるが、通常のTiny Totはコンポジションボディである。オールビスクで上等な仕立てからフランス市場向けに制作されたことは間違いない。今日に至るまで人形が仕舞われていたショコラティエKholer(c1900-1929 スイス)の木製のチョコレートボックスが付属する。プレゼンテーションボックスとして小物を誂えても楽しい。
*SOLD*

Simon & Halbig /Kammer Reinhardt 401 Walking Mignonette
シモン&ハルビック/カマー&ラインハルト401ウォーキング・ミニョネット

c1905 Germany
1905年頃 ドイツ
高さ:20.0cm 後頭部に刻印:SIMON&HALBIG K&R401
 
コンポジション5ジョイント・ウォーキングボディ。黒い靴下にストラップのある薄茶色の靴を描いた足。膝関節は無く、片足を前後に動かすと首を左右に振る。構造上ヘッドを上下に動かすことと座ることはできない。
 
ブラウンのスリーピングアイ、オープンマウス、オリジナルのブロンドモヘアウィッグ。ペールブルーの絹ドレスと揃いのヘッドドレス、下着はオリジナル。カマー&ラインハルト社が1903年頃に開発したウォーキングメカニズムを仕込んだミニョネットは全体的に出来の良い人形が多い。エレガントなお支度からフランス市場向けの作品と思われる。ドレスに経年による傷みあり。
 
ミニョネットサイズの人形はその小ささゆえ顔の描きや義眼のセッティングがベベタイプの人形に比べて困難で、整った出来映えの作品が比較的少ない。この人形は顔の出来も良くウォーイングメカニズムも非常に良好な状態である。
*Schucoのウサギ(*SOLD*)とベアは別売りです
*SOLD*

Papier-Mâché Millinery Display Head
パピエ・マシェ ミリナリー(婦人帽子店)ディスプレイ・ヘッド

Middle 19thC France
19世紀中期 フランス
マークなし 高さ:39.5cm
 
イタリア北部のミラノ公国は16世紀まで、質の高い帽子や手袋の製造で名を馳せるが、17世紀以降はファッションを重要な産業と捉えた戦略的なフランスに流行と洗練の権威の座を譲ることとなる。それでもミラノは現在でも婦人帽子店を意味するミリナリーの語源となった。
 
ハンドペイントされたパピエ・マシェ(紙張り子)製のヘッド・マネキンは、フランスのミリナリーにおいて19世紀半ば、帽子の仕立てまたは仕上がった帽子の展示に使用されたものである。帽子の下の髪の結い上げをイメージした後頭部の形が珍しく、フランスブルターニュの民族衣装のひとつ、コワフと呼ぶレースの被り物用のマネキンと思われる。
 
この種のヘッドは業務用であったため、その多くが廃棄処分され、残存している19世紀の作品は貴重である。欧米ではフォークアートの蒐集家を中心に人気が高いアイテムである。顔料の剥げ、また顔料表面に細かいヒビあり。額などにピン打ちの跡あり。
*SOLD*

French Bisque Head "Maria Bambina"
フランスビスクヘッド「マリア・バンビーナ」

c1915 France
1915年頃 フランス
全長:20.0cm マーク不明(後頭部確認できず)
 
生神誕生祭は生神女(聖母マリア)の誕生を祝う祭りである。1735年に修道女によって作られた幼き聖マリア(マリア・バンビーナ)の蝋人形が、19世紀ミラノにおいて様々な奇跡を起こして以来、マリア・バンビーナ像は広く信仰されるようになる。可愛らしい女の赤子の姿は子宝を授かると云われ婚礼の贈り物にも好まれた。
 
荘厳な銀糸の刺繍を施したヴェルヴェットとシルクとレースの寝具にすっぽりと包まれたビスクヘッドの幼子マリア像。ボディの無い固定されたヘッドのみで人形を取り出すことはできず、このままの状態で家庭で祀ったと思われる。マークの確認はできないが、顔の特徴からフランスのドールメーカーJules Verlingue(ジュール・ヴェルラング)作品と思われる。キリストと修道女のブローチ付き。非常に良好な状態である。
*SOLD*

Deposé Tête Jumeau 8 Bisque Head Doll
デポゼテートジュモー8ビスクヘッドドール

c1887 Paris France
1887年頃 パリ フランス
後頭部に判印:DEPOSÉ TÊTE JUMEAU Bte S.G.D.G. 8(レッドスタンプ) チェックマークまたはアーティストマークLとM
背中に判印:JUMEAU MÉDAILLE D'OR PARIS(ブルースタンプ)
高さ:48cm
 
クローズドマウス、固定されたブラウンのペーパーウェイトアイ、ピアスされた耳、ウッド/コンポジションボディ、人毛ウィッグ。ボルドーレッドの絹ドレスと揃いの麦わら帽子、下着、靴と靴下、これらはすべてオリジナル。手首関節部の顔料剥落、経年によるドレスの傷みあり。べべピンとハットピン(アンティーク)、イヤリング(現代)が付属する。
 
父ピエールからジュモー社を引き継いだエミールは1886年、抱き人形の商品名として"BÉBÉ JUMEAU"を商標登録し1899年までの間TÊTE JUMEAU(テート・ジュモー)シリーズを量産し人気を誇った。
 
数多のモールドが存在するTÊTE JUMEAUの中で最も初期のクラシックな雰囲気漂うべべである。丁寧に描いた睫毛が取り巻く奥目がちなアンバーブラウンの瞳、髪色と同色のなだらかな曲線の眉、赤みのある唇とふんわりとした頬、憂いを帯びた穏やかな優しさを湛えた表情が親しみを感じさせる。
*SOLD*

Kestner 208 All-Bisque Mignonette
ケストナー208 オールビスクミニョネット

c1915 Germany
1915年頃 ドイツ
高さ:10.5cm 後頭部に刻印:208 o 1/2 両腕脚:o 1/2(腕は着衣のため確認できず)
 
オールビスク、固定されたブルーの目、クローズマウス、ヘッドとトルソーがー体の4ジョイントの 10.5cm(4in.)のミニョネットドール。ケストナー型番208(4インチ)は通常スリーピングアイであることから、このドールは後年オリジナル義眼を石膏で固定し直したと思われる。ブラウンのモヘアウィッグに、オリジナルの赤十字付き看護師の制服を着用している。衣装は縫い付けのため着替えはできない。
 
第一次世界大戦中に作られた珍しい看護師衣装のミニョネット、ぽっちゃり体型とにこやかな表情の小さな看護婦さんは見る者の心を癒やしてくれる。ミニョネットサイズの人形はその小ささゆえ顔の描きや義眼のセッティングがベベタイプの人形に比べて困難で、整った出来映えの作品が比較的少ない。この人形は顔の出来も良く概ね良好な状態である。 鼻右脇に若干色抜けあり。 
*人形サイズのおまる (chamber pot) は別売りです
*SOLD*

Spanish Polychrome Carved Wood Infant Jesus of Prague
スペイン彩色木彫「プラハの幼子イエス」

c1900 Spain
1900年頃 スペイン
人形本体:39cm 光背台座込み:52cm
 

16世紀、幼子イエス信仰の強いスペインからボヘミアに嫁いだ貴族の娘が故郷から持参した幼子像は、のちにプラハにある勝利の聖母マリア教会に寄贈された。プラハの幼子像は奇跡の癒しで有名となり、現在も奇跡を求める多くの巡礼者が教会を訪れている。頭に冠、左手に宝珠を戴せ、右手で祝福を示す「プラハの幼子イエス」像への崇敬は世界中のカトリック信者に広まり、彫像の写しが教会や信者の家庭に祀られている。
 
木彫に薄く顔料で着色を施したプラハの幼子イエス像である。多くのスペインやスペイン植民地(当時)の宗教人形は過剰感の強いドラマティックな表情をしているが、この作品は繊細な彩色や手指の表現、柔和な笑みが安らぎを感じさせる。シルクと金糸の衣装、宝珠、光背はオリジナル。台座と2つのロザリオ、ブローチは後年のものである。両足のつま先にダメージあり。

*SOLD*

German 18cm All-Bisque Mignonette
ドイツ18cmオールビスクミニョネット

c1890 Germany
1890年頃 ドイツ
高さ:18.0cm 後頭部に刻印:3
 
オールビスク。5ジョイント。足は白靴下にストラップのある黒い靴が描かれている。ブルーのスリーピングアイ、オープンマウス、オリジナルのモヘアウィッグ。衣装は下着も含め全てオリジナル。シルクに経年の劣化、シミが見られるが概ね良い状態。
 
ミニョネットサイズの人形はその小ささゆえ顔の描きや義眼のセッティングがベベタイプの人形に比べて困難で、整った出来映えの作品が比較的少ない。この作品は顔の出来も良く、フランス市場を意識したシルク衣装を着用した上手のドイツ製ミニョネットである。小指を立てた手の表情までを形作った迫力の18cmサイズのオールビスク・ドール。右手小指の爪先に薄いソゲあり。 
*Schucoのサル(*SOLD*)は別売りです
*SOLD*

Neapolitan Polychrome Carved Wood Infant Jesus
ナポリ彩色木彫「幼子イエス」

Early 18thC Naples Italy
18世紀初頭 ナポリ イタリア
高さ:15.8cm
 
彩色した木彫にガラスの義眼を嵌めた幼子イエスの像である。一本彫りではなく二の腕部分で接がれている。指まで精巧に彫刻されているが一部欠損している。18世紀ナポリの宗教人形の多くは木材から細工の容易なテラコッタ(焼き物)に取って代わられ、この作品の様に全身を木彫したものは比較的珍しい。
 
お尻と頭に穴が穿たれており、元来は冠を被り聖母に抱かれていた可能性もある。臍や性器まで彫刻された小振りな木像は、修道院で修道女によって手作りの衣装を着せられ可愛がられていたのかもしれない。数箇所に小さな顔料の剥落あり。
*SOLD*

French Market All-Bisque Mignonettes
フレンチ・マーケットオールビスクミニョネット

1890年頃 ドイツまたはフランス
(右)マーク:3 高さ:10.5cm
(左)マーク:4 高さ:11.0cm
 
2体ともにオールビスク、固定されたブルーの目、クローズマウス、5ジョイントのミニョネット。ブロンド・モヘアウィッグ、衣装は一部オリジナル。白靴下にストラップのある黒い靴が描かれている。ともに首のジョイントはキッド(仔ヤギ革)が残る状態の良いトルソ、ボディパーツの挿げ替えは無くヘッドとボディのバランスが良い。
 
右の人形は、オリジナルウィッグの毛髪をアレンジしたアップヘア、アンティーク素材を使い後年作られたブラウン系の衣装を着用している。小さなサイズと丁寧な顔描きが端正な印象である。足に靴の顔料が飛んだ箇所あり。左の人形は、リボン付きオリジナルウィッグ、オリジナルの下着、衣装は後年レースを付け足したと思われる。黒目がちの深いブルーアイ、笑みを湛えたリップの描きが愛らしい。ミニョネットサイズの人形はその小ささゆえ顔の描きや義眼のセッティングがベベタイプの人形に比べて困難で、整った出来映えの作品が比較的少ない。この2体は顔の出来も良く、良好な状態である。 
 
このタイプのオールビスクドールは、長きにわたりフレンチ・ミニョネットとされてきたが、近年欧米のドール専門家がフランス製と明言するのを避け、フランス市場向けを意味する 「フレンチ・マーケット」と紹介しているため当店もこれに準ずる。
*2体は別売りです
*長椅子(*SOLD*)は別売りです
*SOLD*

Bru JeuneR 2 Bisque Head Doll
ブリュ・ジュンR 2ビスクヘッドドール

c1891 Paris France
1891年頃 パリ フランス
高さ:29cm 後頭部に刻印:BRU・JNE R 2
 
クローズドマウス、固定されたブルーのペーパーウェイトアイ、ピアスされた耳、ウッド/コンポジションボディ。ストレートリスト。モヘアオリジナルウィッグ。シルクサテンのドレスとボンネット、ピアス、下着、靴と靴下は全てアンティーク、オリジナルと思われる。
 
「ブリュ・ジュン」モールドを発表したレオン・カシミール・ブリュから経営を引き継いたアンリ・シュブロは、ブリュ・ジュンをさらに洗練させてべべ・ブリュの黄金期を築く。しかし次の経営者ポール・ジラールが1891年に発表した「ブリュ・ジュンR」は、時代のニーズに合わせた安価なドイツ人形に対抗して制作過程を簡略化したことで、顔の描きや着色が単調で以前のブリュ作品と比べ大味な印象の人形となってしまう。
 
この小さなサイズのべべ・ブリュは、黄金期の面影を残す奇跡のブリュ・ジュンRで、温かな慈愛さえ感じさせる繊細な表情を見せる。人形本体だけでなく貴族的な衣装や靴も細部まで手抜きなく密度の高い出来栄えである。
*SOLD*

German Bisque Head Mignonette
ドイツビスクヘッドミニョネット

c1890 Germany
1890年頃 ドイツ
高さ:12.0cm 後頭部に刻印:12 o
 
ビスクヘッドに5ジョイントのコンポジションボディ。足は黒い靴下にストラップのある薄茶色の靴が描かれている。固定されたブラウンアイ、オープンマウス、オリジナルのモヘアウィッグ。ブルーの花飾りやアクセサリーを縫い留めたフランス風衣装の下に、通常のドイツミニョネットに見られるコットンプリントのワンピースとシュミーズを着用している。当初ドイツ国内向けに作られた人形が急遽フランス市場向けの商品としてレースや小物を縫い付け販売されたか、過去の持ち主が誂えたかは不明だが非常に魅力的なお支度である。シルクに経年の劣化が見られる。
 
ミニョネットサイズの人形はその小ささゆえ顔の描きや義眼のセッティングがベベタイプの人形に比べて困難で、整った出来映えの作品が比較的少ない。顔の出来も良く風格すら漂う小さな貴婦人は珠玉の逸品と言える。 
*長椅子(*SOLD*)は別売りです
*SOLD*

Polycrome Wood Cherub Head Fragment with Metal Halo
光背付き彩色木彫ケルビム(智天使)断片

Early 19thC Spain
19世紀初頭 スペイン
高さ:10.3cm(光背含まず)
 
顔から翼の生えた幼児の姿で表されるケルビム(智天使)は、5世紀シリアの神学者 偽ディオニシウス・アレオパギタによる『天上位階論』の天使の位階(ヒエラルキア)における第一の位階のなかで、六枚翼のセラフィム(熾天使)の次の位に属し、常に神のまわりに存在し神と直接合一している天使である。美術の分野では、セラフィムは赤い翼、ケルビムは青い翼で表現されることが多い。
 
ガラス義眼と細密に刻んだ歯を見せ笑みを浮かべる木彫の童子は、首から下に残る羽根表現から両翼を欠損した天使と分かる。胸元の羽根は金で筆描きした模様が非常に繊細で美しい。全体に顔料の摩耗が見られるが、後年の塗り直しは一切無く、貴重なオリジナルの金属製光背が残る。どのような形、色彩の翼であったか想像の愉しみのある小さな天使像である。
*SOLD*

NapoleonⅢ Wax Infant Jesus in Glass Frame Box
ナポレオン3世 ガラス付き箱入り蝋製人形「幼子イエス」

c1870 France
1870年頃 フランス 高さ:15.7cm サインなし
 
ツヤのある黒縁の額にガラスを嵌めた厚い紙箱に幼子イエスの立像を収めた、ローマン・カトリック信者の家庭用祭壇のひとつである。
 
6cm程度の小さなイエスの人形は、蜜蜂が巣作りのために分泌する蜜蝋(ワックス)で作られている。黒いガラスビーズの目、カールしたモヘアの髪、王冠や錫杖と同じ金色メタルとレースで装飾を施したヴェルヴェットを身に着けている。ドラマティックな表情の南ヨーロッパや植民地の宗教人形と違って、僅かに笑みを湛えた素朴な顔立ちは、古来の誕生仏にも通じる安らぎを感じさせる。
 
イエスの左右に配した造花や主の文言(フランス語)、頭上の聖心臓の絵など、全て手作りである。心得のある修道士が作業を分担して仕上げたものであろう。ガラス内側に経年の汚れの付着あり。
*SOLD*

Wooden Articulated Girl Mannequin's Left Arm & Hand by Fred Stockman
フレッド・ストックマン少女マネキン木製関節左腕

c1900 France
1900年頃 フランス 長さ:64.0cm サインなし
 
世界初のマネキン会社を設立したラヴィーニュの弟子であったベルギー出身の芸術家 フレッド・ストックマンは、1869年に自分の会社 "Stockman Frères, Bustes et Mannequins" をパリに設立する。彼のマネキン事業成功の鍵は、マネキンの購入を検討中の店舗の予算や用途に合わせ各関節ごとに素材や関節箇所をカスタムできることであった。特に手は、指の第一、第二関節、付け根における球体関節の有無によって「指一本幾ら」と細かく価格設定されていた。
 
この作品は、親指と人差し指は全関節に、中指、薬指、小指は付け根に合わせ釘の球体関節を仕込んだ、繊細な仕草が再現出来る上等な手首をもつ少女の左腕で、手袋等の小物を持たせディスプレイする全身マネキンの一部である。90°以上曲げられる肘内側の切削部分や肩のネジやナットまでが美しい。子供マネキンほど小振りではないが稀少なサイズで、好ましい作品である。手首全体に後天的なペイントがあり当店にてこれを剥離、ペイント跡が残った状態となる。中指付け根の関節釘欠損。
*SOLD*
 

Wax Infant Jesus Asleep in Polyhedron Glass Case
多面体ガラスケース入り蝋製人形「眠れる幼子イエス」

Mid 19thC Italy or France
19世紀中期 イタリアまたはフランス
高さ:28.0cm
 
スパンコールを散りばめたクイリング細工と造花で豪華に装飾した四柱式寝台で眠る幼子イエスをガラスケースに収めた作品。板ガラス同士を模様のある紙テープで留めて作った多面体ケースは木製球体の脚付き。刺繍を施した青いシルクのお包みのイエスと、その足元に寄り添う鶏と蛇は蜜蝋(ワックス)製である。
 
ケース奥中央には、後光の射す三角形(神)とメタリックな金の鳩(精霊)とともに、天の声「これは私の愛する子、私の心に適う者である(マタイ福音書3章17節)」とラテン語で記された巻紙が配されている。
 
笑みを湛えた安らかな寝顔のイエスは、2百年近くの時を経た今もまたこれから先も見る者の心を和ませる、小さな癒しの人形である。ガラスに一箇所ニュウ、ガラスの貼り合わせに一部ズレあり。
*SOLD*
 

German All-Bisque Mignonette in Original French Presentation Box
フランスオリジナルボックス入りドイツオールビスクミニョネット

Late 19thC Germany /France
19世紀後期 ドイツ/フランス
人形:12.5cm ボックス:27.5 x20.2 x 7.0cm ヘッドマークなし
 
19世紀末パリの玩具店AU PARADIS DES ENFANTS(トレーディングカード付き)にて販売された、ドイツ製オールビスクミニョネットとフランス製衣装と小物一式である。上蓋がガラスで箱の中を見通せるプレゼンテーションボックスは、紫色のシクラメンのクロモスが側面に隙間なくデコパージュされている。薄紫とクリーム色で統一した人形の衣装や小物は子ども向けといえ、シックでフランスらしい。
 
ミニョネットは5ジョイント、ブルーのスリーピングアイ、オープンマウス、オリジナルのモヘアウィッグ。衣装は下着、着替えも含め全てオリジナル。足は黒の靴下にストラップのある茶の靴が描かれている。整った顔立ちで愛らしい。マークは無いがシモン&ハルビック作品と思われる。
 
ミニョネットサイズの人形はその小ささゆえ顔の描きや義眼のセッティングがベベタイプの人形に比べて困難で、整った出来映えの作品が比較的少ない。この人形は顔の出来、肌の焼きも良く、フランス市場を意識した上手物で非常に良好な状態である。
*SOLD*
 

Group of Carved Giltwood Angel Heads
金彩木彫天使の一群

Late 18hC France
18世紀後期 フランス
幅:5cm程度(個体差あり)
 
顔から翼の生えた幼児の姿をした金色の天使一群は、ひとつが掌に載るほど小さく愛らしい。わずかに微笑む天使像は、ジェッソ下地に金彩を施した木彫で、裏側に一本の細釘が打たれている。本来大きな作品のパーツであったのか、また宗教用か室内装飾用かは不明である。
 
天使は、型抜きしたものではなく、彫刻、金彩とひとつずつ手作りであるため、顔や髪型(特に前髪)に個性が見られ小さいながらも18世紀フランス彫刻作品の風格が感じられる。
*SOLD*
 

Maison Giral Leather and Metal Prosthetic Arm for Youth
Maison Giral 革/金属製若年用上腕義手

Late 19thC France
19世紀後期 フランス
刻印:GIRAL A BAYONNE 長さ:61cm
革 金属 クッション材
 
19世紀末、左前腕を失った少年か少女または小柄な女性が装着した上腕義手。戦争による負傷者向けの既製品とは異なり特別に誂えられたもので、貴族またはブルジョワの裕福な者のために製作されたと考えられる。
 
フランス南西部フランス領バスクの中心都市バイヨンヌの医療器具メーカーMaison Giralの製作で、革と金属の組み合わせ、紐を編み上げる釦など非常に丁寧なつくりである。硬めのクッション素材で爪まで表現した手は、指関節が無くポーズは変えられないが、手袋を着用すれば本物に近い手の感触を相手に与えることができる。本来は医療用品であるが時を経て単独で観ると、小さ目サイズということもありオブジェとして美しい。
*SOLD*

Chinese Carved Tusk Doctor's Lady
清朝牙彫診療用女性像「ドクターズレディ」

Late 19thC (Qing Dynasty) China
19世紀後期 清朝後期 中国
長さ:24.2cm
 
片肘をついて横たわる髪を後ろに結った纏足の高貴な中国女の裸体像は「ドクターズレディ」と呼ばれ、明から清朝時代の後宮において男性医師が女性を診療する際、道徳的な慎み深さから、女性患者の体を直に視たり触れたりする代わりにこの像を使って具合の悪い箇所を指し示す目的でつくられた。
 
通常サイズは10〜25cmと云われ、この作品は最も大きいもののひとつである。女の体や顔の表情の官能的な彫刻表現に加え、獣牙の密度ある重みの存在感は圧倒的で、診療用道具というより美術工芸品と呼ぶにふさわしい。比較的時代の若い欧米向けの土産品的なドクターズレディは市場に多く出回っているが、1900年以前の作品は稀少である。
*SOLD* 

Mechanical Wooden Prosthetic Hand
機械仕掛け木製義手

c1915 Probably France
1915年頃 おそらくフランス 長さ:19cm
 
20世紀初頭、男性用義手は第一次世界大戦(1914-18)で負傷した兵士による需要が高まった。この頃の一般的な木製義手は、球体関節の人差し指と中指と、親指付け根のバネ機能を利用してものを掴むタイプであったが、通常親指のバネは十分に強力ではなく、書類や食器、手袋等の小道具を「掴む」というより「挟む」程度の補助的装具であった。
 
この義手は、木をくりぬいて機械を内蔵した非常に珍しいモデルである。掴んだものを手首内側のレバーで固定する仕組みで、ものを掴む人差し指、中指、親指の先は滑り止めの革が張られている。一般品によくある球体関節は使用されず、指の表情つまり見た目より「ものを掴む」本来の機能を優先した構造は、一部の武器や乗物の操縦が可能であるため、軍の上層部の者などの特注品と思われる。木製手首のねじ留めを外し内部の金属製の機械仕掛けを晒した佇まいは、独特な美しさがある。
*SOLD* 

Neapolitan Polychrome Carved Wood Presepio Blackamoor
ナポリプレゼピオ彩色木彫ブラッカムーア

Late 18thC Naples Italy
18世紀後期 ナポリ イタリア 高さ:17.5cm
 
東方の三博士(マギ)は、ベツレヘムの星に導かれ、生まれたばかりのイエスのもとへと赴いて礼拝を捧げた。キリスト教徒がクリスマス時期に飾る、キリスト降誕の場面を表す人形群、イタリア語で Presepio(プレゼピオ)には、たいてい贈り物を携えた三博士の人形が飾られる。
 
このブラッカムーアは、三博士の従者のひとりとして制作された作品で、頭部と前腕下肢は彩色を施した木彫、体は詰め物で非常に豪華な衣装を纏っている。指は精巧に彫刻されているが一部欠損している。
 
18世紀ナポリの宗教人形の多くは、木材から細工の容易なテラコッタ(焼き物)に取って代わられ、この作品の様な木彫は比較的珍しい。ブラッカムーアの微笑を湛えた口元や目元そして全身のポーズは、神の子と邂逅する博士の傍で、控え目に歓び驚く姿を表現している。
*SOLD*

Carved Oak Figure Head “Irene"
オーク彫刻「エイレネ」船首像

Late 19thC France
19世紀後期 フランス 高さ:42.5cm
 
西洋帆船の船首を飾る彫像は、船首像(フィギュアヘッド)と呼ばれ航海の安全を祈願して船に取り付けられる。その歴史は古代に遡り船名を表す動物や人物の意匠であることが多い。大航海時代は巨大な全身像であったが、18世紀以降は船の性能に関わる重量や費用の問題から劇的に縮小され、上半身像や胸像に変化を遂げた。
 
平和の女神エイレネを表すラテン語”Irene”と刻銘された真鍮の板を腰に付けた、木彫の女神像は、顔立ちや木材の状態から19世紀作品と思われる。耳飾りや髪の流れを丁寧に彫り出した優しい面差しの女神像は、非常に小型な船首像で、室内装飾に誂え向きといえよう。
*SOLD*

Moulded and Sculpted Terracotta Figure "Mater Dolorosa"
テラコッタ彫刻「マーテル・ドロローサ(嘆きの聖母)」

Late 19thC Spain
19世紀後期 スペイン 高さ:40cm
 
頭から腰までと両腕が着色されたテラコッタ(焼き物)、腰から下はキャンバス地を張った木枠でできている。元来はベールとドレスを装着し家庭で祀られた宗教人形である。ガラス義眼をもち、顔に残る涙の痕はガラスの涙が貼ってあったと思われる。針金でできた茨の冠を左腕に提げ、両手を組み祈りを捧げている。
 
マリア信仰の強いスペインにおいては現代でも、マーテルドロローサ(嘆きの聖母)を祀る習慣があるため多くの聖母像がつくられている。その中でもこの作品は、聖母=母親と呼ぶには胸も薄く中性的で儚げな立ち姿のマリア像である。

*SOLD*

Papier-Mâché Millinery Display Head
パピエ・マシェミリナリー(婦人帽子店)ディスプレイ・ヘッド

Middle 19thC France
19世紀中期 フランス
マークなし 高さ:40cm
 
イタリア北部のミラノ公国は16世紀まで、質の高い帽子や手袋の製造で名を馳せるが、17世紀以降はファッションを重要な産業と捉えた戦略的なフランスに流行と洗練の権威の座を譲ることとなる。それでもミラノは現在でも婦人帽子店を意味するミリナリーの語源となった。
 
ハンドペイントされたパピエ・マシェ(紙張り子)製のヘッド・マネキンは、ピンを打つ事ができるよう後頭部にかけて布が張られいる。フランスのミリナリーにおいて19世紀半ば、帽子の仕立てまたは仕上がった帽子の展示に使用されたものである。
 
この種のヘッドは業務用であったため、その多くが廃棄処分され、残存している19世紀の作品は貴重である。欧米ではフォークアートの蒐集家を中心に人気が高いアイテムである。鼻先に顔料の剥げ、経年の擦れあり。
*SOLD*

Ziegler Studio Wax Models "The First Developments of The Embryo's External Form"
ツィーグラー工房蝋製模型一式「胎芽外形の初期進化」

c1870 Germany
1870年頃 ドイツ
高さ(台座込み):①13.0cm(第3週)②14.5cm(第5週)④18.5cm(第7週)⑤22.5cm(第8週)*③(第6週)欠番
 
解剖用の死体保存が困難であった時代における蜜蝋(ワックス)製の解剖模型は、医学者や学生が立体的な器官や組織を人体の内部構造とともに把握することを目的として製作された。リアルで精巧なアンティークの蝋製模型は、アート(芸術)とサイエンス(科学)の結合した工芸品である。
 
1800年頃から胎児の進化発生への関心が高まり、1859年ダーウィンの『種の起原』の出版で胎児研究の重要性がより増したが、ヒトの妊娠初期の胎芽から胎児の標本確保は容易ではなく、胎児の進化過程を表す蝋製模型の需要が高まった。ドイツ人の発生学者アドルフ・ツィーグラー Adolf Ziegler(1820–1889)と息子フリードリヒは、数百におよぶヒトや動物の胚の蝋製解剖模型を製作、彼らの作品は、1867年パリ万博、1873年ウィーン万博に出品され、1893年シカゴ万博において最高賞を獲得した。
 
胎芽(妊娠8週以降を胎児と呼ぶ)の模型一式は本来五体一組であるが、第6週の模型が欠けている。実物に対し第7週は8倍拡大、ほか三点は9倍拡大のサイズである。指などに欠けも無く彩色も残る、良い状態である。
*SOLD*

French All-Bisque Mignonettes
フランスオールビスクミニョネット

c1880 France
1880年頃 フランス
マークなし 高さ:(右)13.0cm (左)8.5cm
 
2体ともにオールビスク、ドームヘッド、固定された目、クローズマウス、5ジョイントのミニョネット。ブロンドのモヘアウィッグ、衣装は下着も含め全てオリジナルである。2体ともフレンチミニョネットに多く見られるサイズ10cm(4in.)と異なり、比較的珍しいサイズの人形である。
 
右の大きめの人形は、ブラウンの目、ピンクのサテンとボルドーのヴェルヴェットのコンビのシルクドレス、足はリボン付きの靴型のモールドがピンクに着色されているのが珍しい。左の小さな人形は、ブルーの目に合わせたトルコ石風の飾りボタンの付いた細いストライプ柄のシルクドレス、足はストラップのある黒い靴が描かれている。ピンクのビーズバッグは後から持たせたものと思われる。
 
ミニョネットサイズの人形はその小ささゆえ顔の描きや義眼のセッティングがベベタイプの人形に比べて困難で、整った出来映えの作品が比較的少ない。この2体は顔の出来も良く、良好な状態である。 
*2体は別売りです
*SOLD*

Wax Anatomical Models : Heart of 6-Weeks Embryo /Brain of 36-Weeks Foetus
蝋製解剖模型:胎芽(6週)の心臓、胎児(36週)の脳

Middle 19thC Probably Germany
19世紀中期 おそらくドイツ
心臓:高さ 11.3cm(台座込み) 脳:長さ 8.8cm
 
解剖用の死体保存が困難であった時代における蜜蝋(ワックス)製の解剖模型は、医学者や学生が立体的な器官や組織を人体の内部構造とともに把握することを目的として製作された。リアルで精巧なアンティークの蝋製模型は、アート(芸術)とサイエンス(科学)の結合した工芸品である。
 
1800年頃から胎児の進化発生への関心が高まり、1859年ダーウィンの『種の起原』の出版で胎児研究の重要性がより増したが、ヒトの妊娠初期の胎芽から胎児の標本確保は容易ではなく、胎児の進化過程を表す蝋製模型の需要が高まった。
 
この2作品はそれぞれ、胎児の「心臓」と「脳」の進化発生を示す模型群からの一部である。心臓は6倍拡大サイズ、脳は実物大である。
*2点は別売りです
*SOLD*

Wooden Articulated Female Mannequin's Left Arm & Hand by Fred Stockman
フレッド・ストックマン女性マネキン木製関節左腕

c1900 France
1900年頃 フランス 長さ:72.0cm サインなし
 
世界初のマネキン会社を設立したラヴィーニュの弟子であったベルギー出身の芸術家 フレッド・ストックマンは、1869年に自分の会社 "Stockman Frères, Bustes et Mannequins" をパリに設立する。彼のマネキン事業成功の鍵は、マネキンの購入を検討中の店舗の予算や用途に合わせ各関節ごとに素材や関節箇所をカスタムできることであった。特に手は、指の第一、第二関節、付け根における球体関節の有無によって「指一本幾ら」と細かく価格設定されていた。
 
この作品は、親指と人差し指は全関節に、中指、薬指、小指は付け根に合わせ釘の球体関節を仕込んだ、繊細な仕草が再現出来る上等な手首をもつ女性の左腕で、手袋等の小物を持たせディスプレイする全身マネキンの一部である。90°以上曲げられる肘内側の切削部分や肩の木製ネジ等の細部までが美しい。関節の球体の受け皿周縁部に僅かな欠け数箇所、薬指に修復箇所、全体にアタリ、擦れあり。
*SOLD* 

Neapolitan Polychrome Terracotta Small Cherub's Head
ナポリテラコッタ彫刻ケルビム(智天使)小像

Late 18thC Naples Italy
18世紀後期 ナポリ イタリア 幅:8.1cm
 
顔から翼の生えた幼児の姿で表されるケルビム(智天使)は、5世紀シリアの神学者 偽ディオニシウス・アレオパギタによる『天上位階論』の天使の位階(ヒエラルキア)における第一の位階のなかで、六枚翼のセラフィム(熾天使)の次の位に属し、常に神のまわりに存在し神と直接合一している天使である。美術の分野では、セラフィムは赤い翼、ケルビムは青い翼で表現されることが多い。
 
ガラス義眼と細密に彫刻された歯をもつテラコッタ製の小さな天使は、苦悩のような表情が魅力的である。全体に顔料の摩耗が見られるが、後年の塗り直しは一切無く、鮮やかに彩られていた状態を彷彿させる作品である。背面に壁掛け用の金具が穿たれている。
*SOLD*

Leather and Metal Child's Medical Corset
革/金属製小児医療用コルセット

Early 20thC France
20世紀初頭 フランス
刻印なし 高さ:約38cm 革 金属 木綿
 
20世紀初めに作られた、麻痺等を患った幼児のための医療用補助具、腰仙椎装具である。骨盤から腰部への腰椎と仙腸関節の動きを制限するコルセットで、厚い革と金属で作られている。革の重みを軽減するため布製の背部と肩ひもが付属し、骨盤と背部3箇所を紐で編み上げる仕様となっている。
 
腰部分の革の成型や布の裏打ち、金属のビス留めなど非常に丁寧なつくりで、貴族またはブルジョワの裕福な家庭の子どものために製作されたものと考えられる。本来は医療用品であるが時を経て単独で観ると、小さなサイズということもありオブジェとして美しい。
*SOLD*

Dr. Auzoux Papier-Mâché Foetus Anatomical Model
解剖学者オズー パピエ・マシェ「胎児」解剖模型

1914 Paris France
1914年頃 パリ フランス 長さ:42.0cm
 
解剖用死体の保存が困難であった時代における蜜蝋(ワックス)製の解剖模型は、医学者や学生が立体的な器官や組織を人体の内部構造とともに把握することを目的として製作された。しかし高価な蝋製のキュンストレーキ(等身大の人体模型)はひどく重い上に壊れやすく、手で触る事ができない難点があった。
 
19世紀初頭、フランス人解剖学者ルイ・オズー Louis Thomas Jérôme Auzoux(1797–1880)が開発、製作したパピエ・マシェ(紙張り子)による解剖模型は、軽くて安価、更に臓器の各部分を自由に取り外すことを可能にした。彼の作品は、フランス国内だけでなくロンドン万博において受賞を果たし、国際的な成功をおさめた。
 
胎児の模型はオズーのメゾンで1914年に製作されたものである。ひとつひとつ丁寧に手彩色された小さな臓器は、各部に番号ラベルが貼られ美しく愛おしい。イギリス ケンブリッジのウィプル博物館に同型の作品が所蔵されている。
 
参考資料:[Explore Whipple Collections] 
https://www.whipplemuseum.cam.ac.uk/explore-whipple-collections/models/dr-auzouxs-papier-mache-models/foetus-models
*SOLD* 

Simon & Halbig 886 All-Bisque Mignonette
シモン&ハルビック886オールビスクミニョネット

c1890 Germany
1890年頃 ドイツ
高さ:17.5cm 後頭部に刻印:886 2
 
オールビスク。5ジョイント。足は黒い靴下にストラップのある茶色の靴が描かれている。ブルーのスリーピングアイ、オープンマウス、オリジナルのモヘアウィッグ。衣装は下着も含め全てオリジナル。シルクリボンに経年の劣化が見られる。曲げ物のケース入り。
 
ミニョネットサイズの人形はその小ささゆえ顔の描きや義眼のセッティングがベベタイプの人形に比べて困難で、整った出来映えの作品が比較的少ない。この作品は顔の出来も良く、フランス市場を意識したシルク衣装を着けた上手のシモン&ハルビックのオールビスク型番886の後期モデルである。
*SOLD*

Neapolitan Polychrome Carved Wood and Terracotta Crèche Figure
ナポリ彩色木彫/テラコッタ宗教人形

Middle 19thC Naples Italy
19世紀中期 ナポリ イタリア
人形本体:57.5cm 台座込み:60.5cm
 
キリスト教徒がクリスマス時期に飾る、キリスト降誕の場面を表す人形群、イタリア語で Presepio(プレゼピオ)の一体。ヘッドはガラス義眼を嵌めたテラコッタ、前碗と下肢は木を彫刻して作られており、ボディは木毛を詰めた布製である。
 
衣装は失われているが、首と耳を飾った地中海の珊瑚と朱色に彩色された靴下が、華やかに着飾っていた往時を偲ばせる。傾けた首と彼方を見つめるような表情が美しい、若い女の像である。台座は後年のもの。右手指に修復あり。
*SOLD*

Poured Wax Infant Jesus Doll in a Box
箱入り蝋製人形「神の御子イエス」

Middle 19thC England or Italy
19世紀中期 イギリスまたはイタリア
人形本体:31cm 箱:33.5 x19.5 x13.0cm
 
寝床にしつらえた薔薇とレース模様の箱の中に横たわる、シルクのベビードレスを纏った赤子の人形である。蜜蝋(ワックス)製のショルダーヘッドと前腕以外は布に覆われた詰め物のボディで下肢の表現はない。ガラス義眼の青目の透明感が非常に美しい。箱の上蓋に仏語で "Le Petit Jesus(幼子イエス)" のラベルがある。
 
19世紀半ばのヨーロッパでは、英国のピエロッティやモンタナリといったイタリア系移民のワックスドール工房が、それ以前の宗教色の強い人形とは異なる、純粋な赤子や少女の人形を制作して有名となった。
 
この作品は、偶像崇拝を禁じられたプロテスタント主流の英国で制作された単なるベビードールがフランスに渡り、神の御子として愛されたものと思われる。箱やガラスドームの中に人形を横たえて(場合によっては造花と共に)飾る事は、現代の感覚では柩を連想させて奇妙であるが、ヴィクトリア時代の流行であった。指に欠損あり。目の両脇ワックス部分に義眼を嵌めるストレスで生じたニュウあり。
*SOLD*

Wax Virgin and Child Cased in a Glass Dome
ガラスドームに収められた蝋製聖母子像

c1690 Italy or Spain
1690年頃 イタリアまたはスペイン
人形:33.0cm(冠含まず) ケース:48.5cm
 
蜜蜂が巣作りのために分泌する蜜蝋(ワックス)で作られた幼子イエス、それを抱く聖母は、頭部と前腕のみ蝋製で衣装の下はワイヤーと布でできている。双方とも義眼ではなく描き目である。元来は繊細に型取りされたイエスの両腕と聖母の両手の指は欠損している。
 
目を惹く聖母の衣装は当時のオリジナル。補強された絹のブロケード製の胴衣(ボディス)。銀糸刺繍の模様のある絹地の上着とスカートは金属の箔と金糸のレースで縁取られている。バロック期の聖母像の特徴である冠は銀のワイヤーと金属製スパンコールで作られている。
 
銀や金属の酸化と絹地の退色が無ければ豪華絢爛な聖母子像であったことが想像できるが、イエスを見つめる穏やかな聖母の慈愛の表情は300年の時を経ても変わること無く、その存在を示しているかのようである。ガラスドームのケースは後年(19世紀後期)のもの。
*SOLD*

Sonneberg Maker Unknown Small Bisque Head Doll
工房不詳ビスクヘッドドール

c1885 Germany
1885年頃 ゾンネベルク ドイツ
高さ:23cm(0号) 後頭部に刻印:168 0
 
クローズドマウス、固定されたブルーのペーパーウェイトアイ、ピアスされた耳、ウッド/コンポジションボディ、モヘアウィッグ、シュミーズドレスと揃いの帽子、靴と靴下、これらはすべてオリジナルと思われる。象牙製の双眼鏡が付属する。
 
フランス市場向けにドイツのゾンネベルクで作られたビスクドールである。当時人気の高かったフランスのべべジュモーに類似している。ジュモー社は1881〜97年の間、小さなベベとして1号サイズ(25cm)を生産していたが、82年と83年にのみ22cmの人形をつくったとされており(0号と呼んだかは不明)、この作品は稀少なサイズのベベといえる。小ささこその精巧さは無名の工房作品とは思えない神秘性がある。 
*画像の人形は羽の付いた椅子(現代物/非売品)に座っています
*SOLD*

Wax Girl Mannequin Head
蝋製少女マネキン頭部

c1915 France
1915年頃 フランス 高さ:23cm
 
蜜蜂が巣作りのために分泌する蜜蝋(ワックス)でできた少女の頭部。元は張り子のボディに装着された、ディスプレイ用マネキン人形の一部である。首下部にボディ装着用のハト目と紐が残る。この種のヘッドは業務用であったため、その多くが廃棄処分され、残存している20世紀初頭の作品は貴重である。
 
澄んだブルーの瞳のガラス義眼(血管表現はない)、頭部や眉には栗色の人毛が一本ずつ丹念に植毛されている。睫毛は剥落している箇所がある。髪の巻き毛をキープするため小分けした髪束を巻き、紙で留め置いているのがリボンの様でかわいらしい。
*SOLD* 

Small Size Wooden Articulated Artists Lay Figure (Dessin Mannequin)
スモールサイズ木製関節人形(デッサンマネキン)

Early 19thC France
19世紀初期 フランス 高さ:24.5cm
 
画家のアトリエの必需品デッサンマネキンの起源は定かではない。古くは肖像画家が注文主である貴族にモデルを長時間務めさせずに済むようマネキンに服を着せ、服のシワや襞の感じを描いたとも云われる。
 
テノン・ジョイント(合わせ釘による関節)は古い宗教人形にも見られるが、18世紀頃から腰が球体の関節人形が作られ多様なポーズが可能となり、芸術家が愛用するようになった。19世紀までのマネキンは、20世紀の量産品とは異なり、顔や指、あばら骨まで彫刻された、つくりの良いものが多い。当時の芸術家にとってマネキンを所有することはステータスであったのかもしれない。
 
この作品は24.5cm(10インチ)と非常に小さく珍しいモデルである(通常60~80cm)。関節部分の板はほんの2ミリ、顔や指だけでなく膝や肘など細部も彫刻されている。性別の無いマネキンとはいえ男性的なものが一般的であるが、この作品は女性を思わせ、特別に誂えたものであったと考えられる。
*SOLD*

Wax Boy Mannequin Bust
蝋製少年マネキン胸像

c1915 France
1915年頃 フランス 高さ:31cm
 
蜜蜂が巣作りのために分泌する蜜蝋(ワックス)でできた胸像。元は張り子ボディに装着したディスプレイ用マネキン人形の一部である。血管まで表現したガラス義眼、頭部や眉、睫毛には金髪の人毛が一本ずつ丹念に植毛されている。照明を浴びてウィンドウに飾られることはなかったのであろう、顔料による化粧まで極上の状態である。この種のヘッドは業務用であったため、その多くが廃棄処分され、残存している20世紀初頭の作品は貴重である。
 
時代設定1911年の映画「ヴェニスに死す」の美少年タジオを彷彿とさせる付属の水兵襟は、19世紀末英国海軍幼年学校の制服となった水兵服が、欧米で子供服として20世紀初頭まで大流行した当時のものである。右耳縁に僅かな欠けあり。
*SOLD*

Polychrome Carved Wood Infant Jesus Sculpture
フランドル彩色木彫「幼子イエス」

Early 17thC Flanders
17世紀初頭 フランドル 高さ:12.3cm
 
フランドルは、南ネーデルランド(現オランダ南部、ベルギー西部、フランス北部)の地域で、中世から毛織物を中心に商業経済が発達し、繁栄してきた。スペイン・ハプスブルグ家の統治下にあったスペイン・ネーデルランド領は、16世紀の宗教改革後もカトリックが勢力を維持し、宗教的な美術品の制作も続けられた。
 
木彫(おそらく菩提樹)の幼子は、黒い髪と柄のある衣の一部を残し彩色は剥落している。ルネサンス以降のイタリアの作品と比べると、中世の面影が残る素朴な作品である。簡素でにこやかな表情は見る者の心を和ませるが、キリスト教の聖像ではこうした表現は存外稀少で、メヘレン周辺の作品と推定できる。
*SOLD*

Wooden Prosthetic Hand Worn by a Lady
婦人用木製球体関節義手

Late 19thC Probably England
19世紀後期 おそらくイギリス 長さ:15.5cm
 
ヴィクトリア時代、左手首を失った貴婦人が装着した木製義手である。現在紐が切れているが、合わせ釘による球体関節内部に紐を通し親指と人差し指、中指を動かすギミックとなっている。
 
戦争による負傷者向けの既製品とは異なり、ひとりの女性用に特別に誂えられたものである。装着時には手袋の下に隠され人目に触れることはなかったのであろうが、真鍮と木の組み合わせ、親指部分の内部の紐を固定する釘痕がオブジェとして美しく格調高い。
*SOLD*

Child Mannequin by Fred Stockman
フレッド・ストックマン子供のマネキン

c1900 France
1900年頃 フランス 高さ:72.0cm サインなし
 
世界初のマネキン会社を設立したラヴィーニュの弟子であったベルギー出身の芸術家 フレッド・ストックマンは、1869年に自分の会社 "Stockman Freres, Bustes et Mannequins" をパリに設立する。
 
国際的な博覧会で次々と賞を獲得し、1900年パリ万博では審査する側となった彼のマネキン人形は、精巧な関節の指を持つもの、自転車を漕ぐポーズのできるものなど、それ以前の無機質な人体に命を吹き込んだ。
 
この子供マネキンは、頭部のない布張りの胴体、着色された木彫の両足、木製関節により可動の腕、小さな球体関節の指によってあらゆる表情をつくることのできる着色された手を持つ。
*SOLD* 

F. Gaultier Bisque Head Doll (6 F.G in Scroll) with "La Maison Bleue" Label
F. ゴーティエ・スクロール ビスクヘッドドール

c1890 France
1890年頃 フランス 高さ:42cm
後頭部に刻印:6 F.G(スクロール) 背中に "La Maison Bleue" の楕円形ラベル
 
クローズドマウス、固定されたブルーのペーパーウェイトアイ、ピアスされた耳、ウッド/コンポジションボディ、モヘアウィッグ、コットンドレスと揃いの帽子、下着、靴下これらはすべてアンティーク。オリジナルと思われる。靴はヴィンテージの可能性あり。左頬に僅かな色抜けが一箇所がある他はヘッド、ボディとも良好な状態。
 
ラベルの「メゾンブルー」と関係するのであろうか、深遠な蒼い瞳に蒼いデイドレスの少女である。アッシュブロンドの髪は眉の色とのバランスもいい。
*SOLD*

Neapolitan Polychrome Carved Wood Angel
ナポリ彩色木彫天使像

Early 18thC Naples Italy
18世紀初頭 ナポリ イタリア
身長:約15cm 羽根の長さ:9.5cm
 
掌に載る小鳥ほどの大きさの天使で、目にはガラス義眼、歯まで彫刻されている。白や金ではなく極彩色の天使の羽根の色どりが、いかにもイタリアらしい。塗り直しのない、肌の着色に使用された顔料は非常に滑らかで、木との相性が良くひび割れや剥落がほとんどない。
 
キリスト教徒がクリスマス時期に飾る、キリスト降誕の場面を表す人形群、イタリア語でPresepio(プレゼピオ)のひとつと考えられる。
*SOLD*

Bru Jeune 8 Bisque Head Doll
ブリュ・ジュン 8ビスクヘッドドール

1887~9 Paris France
1887〜9年 パリ フランス 高さ:56cm
後頭部に刻印:BRU・JNE 8
 
オープンクローズドマウス、固定されたブラウンのペーパーウェイトアイ、ピアスされた耳、ウッドボディ。ストレートリスト。人毛オリジナルウィッグ。シルクドレスとボンネット、シルクのコルセットを含む下着、靴と靴下は全てアンティーク、オリジナルと思われる。シルクサテンのドレスとボンネットは損傷が激しい。
 
レオン・カシミール・ブリュは「ブリュ・ジュン」モールドを発表した数年後の1883年、経営権をアンリ・シュブロに売却する。シュブロは、魅惑的な表情のブリュ・ジュンの製作を継続し、さらに革製の脚の膝下を木製に改良することで、気品溢れる美しい立ち姿の少女人形を完成した。蒐集家の間でシュブロ時代はべべ・ブリュの黄金期と謳われる。
 
この作品は、当時人気を二分していた人形工房ジュモーのコンポジション・ボディと同じく、壊れ難く多様なポーズが取れるようにシュブロが新開発した、ジュラ山脈の木材をくり抜いた球体関節のボディ(初期ブリュの木製ベベ・モデルとは別構造)で、1887年から1889年までの3年間に製作されたものとなる。
*SOLD*