Archives アーカイヴスⅢ 【Works of Art〜美術工芸品】

Pair of Tortoiseshell and Enamel Opera Glasses
べっ甲/エナメル オペラグラス

Late 19thC France
19世紀後期 フランス
刻印なし 長さ:5.7cm(収納時) 幅:10.0cm
べっ甲 エナメル 真鍮 レンズ
 
 凸レンズと凹レンズを組み合わせたガリレオ式の観劇用双眼鏡(オペラグラス)。鏡胴部はエナメルで、戸外で食事や踊りを楽しむ村人たちが描かれている。接眼部、焦点調節リング、対物レンズの縁取りはべっ甲で装飾されており、べっ甲の濃茶色とエナメルの明るい色調の対比が美しい。
 
 オペラ劇場の一般客席から隔離されたバルコニーの貴賓席は、王侯貴族を中心に新興ブルジョワで形成する社交界の者のための社交の場のひとつであった。特等席のバルコニーは、観客を睥睨できる一方、観客からの視線を浴びる座席であり、趣向を凝らした完璧な装いの社交界の者たちの振る舞いは、さながらもうひとつの舞台であった。貴賓席の者にとってのオペラグラスは、舞台鑑賞の必需品であるとともにステータスであり、ファッション小物であった。
 
 シルクヴェルヴェットのオリジナルケース(傷みあり)が付属する。
*SOLD*
 

Gabriel Argy-Rousseau Pâte de Verre Glass Plaque “Vierge de Lys”
アルジー=ルソー パートドヴェール プラーク『百合の聖母』

c1925 France
1925年頃 フランス
サイン:ARGY 高さ:10.3cm(フレーム込み)
ニッケル鍍金オリジナルフレーム
 
 「パートドヴェール」は鋳型にガラスの粉を敷き詰め炉に入れて熔融成形するガラス工芸技法のひとつで、古代に途絶えた技術をフランスアールヌーヴォー期のガラス作家が復活させたものである。この時代のパートドヴェール作品は、ガラスの練り粉を粘土のように操い生まれる複雑な色合いと個性豊かな造型が特徴で、ガラス工芸の域を超越した芸術と呼ぶにふさわしいものであった。
 
 ガブリエル・アルジー=ルソー(1885-1953)は、パートドヴェール作家の第一人者で、多くの人気作品を世に送り出した。彼が手掛けた ”Vierge de Lys (百合の聖母)”は、フレーム入りの宗教的主題のガラスプラークのシリーズのひとつである。薄く透明感のある背景に象牙色の百合の花と聖母の横顔が、繊細で優美な印象を与える作品である。
*SOLD*
 

Manufacture Nationale de Sèvres Biscuit Porcelain Bust "Floraison" by Ichiga NUMATA
国立セーヴル陶磁器製作所/沼田一雅 白磁ビスク胸像 “Floraison(花盛り)"

1927 France (Model 1905)
1927年 フランス(1905年 原型)
刻印:SEVRES、MADE IN FRANCE、S 1927 IN?、IF、ぬま田 高さ:17cm
 
 18世紀ルイ王朝の庇護を受け王立窯となったセーブル陶磁器製作所は、華麗なロココ趣味の名品を多数生み出し、フランスをヨーロッパ文化の頂点に押し上げた。革命後ナポレオンによって国立となったセーヴル窯は、帝政(アンピール)様式の作品、19世紀半ば以降の万博向けの作品と、常に伝統と新しさを融合した高級磁器を作り続けて現在に至る。
 
 様々な技法によるセーヴル作品のなかのひとつに彫刻原型の白いビスク(素焼き)像がある。マリー・アントワネットやナポレオン・ボナパルトのビスク胸像は繰り返し復刻され、世界各国の美術館にも収蔵されている。
 
 彫刻家沼田一雅(1873-1954)は、1903年に渡仏、国立セーブル陶磁器製作所に入所し、石膏型を使って成型する西洋陶磁の製作方法を学び日本に伝えた。ビスク胸像という西洋的手法で純和風の少女を表現した本作品は、1905年に沼田がセーヴルのために彫刻原型を製作した。涼やかな面差し、結髪と髪飾り、着物の柄ー浮世絵から抜け出した様な少女像に、当時のフランス人は新鮮な美を見たであろう。
*SOLD*
 

Dominique Alonzo Bronze /Ivory Female Bust Cast by Louchet Foundry
ドミニク・アロンゾ ブロンズ/象牙彫刻女性像 Louchet鋳造所

Early 20thC Paris France
20世紀初頭 パリ フランス
刻印:DA、PARIS /LOUCHET /CISELEUR 高さ:7.8cm
 
 中世風の衣装に身を包み、物憂げな表情をした女の胸像。白い女の顔は手彫りされた象牙、女の髪や衣装はパチネを施したブロンズで、マントのドレープや帽子の飾りまで繊細に表現され、小像ながら非常に味わい深い作品である。
 
  フランスの彫刻家ドミニク・アロンゾは、20世紀初めアールヌーヴォーからアールデコへ美術様式が変化する時代において、神秘的な女性像を好んで制作した。一般にブロンズ像は複製が容易く制作年代の見分けが困難であるが、この作品は作品自体の出来はもとより、当時パリで操業していた Louchet Ciseleur鋳造所の刻印がある。20世紀初頭のパリで彫刻家(原型師)と鋳造職人が最高の作品を目指して連携する姿を想像すると胸に迫る。 
*SOLD*
 

Rene Lalique Frost Glass Sculpture "CHAT ASSIS No.1208"
ルネ・ラリック フロストガラス彫像 “CHAT ASSIS(座る猫)No.1208"

1932(Model Designed) France
1932年(原型デザイン) フランス
サイン:R.LALIQUE FRANCE(ステンシル) 高さ 21.0cm
 
 ガラス作家ルネ・ラリックが1932年に原型を制作した、重量3kgを超す無垢ガラスの猫の彫像である。猫の毛並みを刻んだ表面を艶消しで仕上げた分厚いガラス素地は、光線の加減で表情が変化し、立体彫刻の魅力を伝える。
 
 ルネ・ラリックの死後、息子マルクは、ルネの2倍の酸化鉛をガラスに含有させ、透明度の高いクリスタルガラスに素材を一新し、現代のラリッククリスタル社の礎を築いた。
 
 "CHAT ASSIS"は、ラリッククリスタル社が現在も製産を続ける型であるが、ルネ・ラリック時代の本作品は、クリスタルガラスのクールでモダンな硬質さと比べて温もりのあるガラス素地が、彫りの陰影を映し出し、猫の生命感を表している。
*SOLD*
 

Silver / Engraved Glass Spirit Flask (Flacon à Eau de Mélisse)
銀/グラヴュールガラス携帯用薬草蒸留酒入れ

c1860 France
1860年頃 フランス 
刻印 : ミネルヴァ(純度950) 判読困難な工房印 長さ:11.5cm ガラス 鍍金された銀
 
 ナポレオンⅢ世時代、貴婦人がバッグの中に薬草蒸留酒を忍ばせるための壜である。16世紀ヴェネチアのカルメル会によって作られ修道会で使用されていたメリッサ水は、薬草の効能がヒステリーの発作を抑え心をリラックスさせるということで特に女性に好まれた。
 
 リボンと花を繊細にグラヴュールした中栓つきのガラス壜。鍍金を施した銀製蓋とガラス壜から外すことのできる銀製カップは、ルプセ技法によりガーランド(花綱)が打ち出されている。
 
 王侯貴族を中心に新興ブルジョワで形成する社交界で華やかさを競いあうために、失神するほどコルセットで体を締め付けた貴婦人が気付けに一杯の蒸留酒を優雅に嗜んだ、フランスらしいアイテムである。
*SOLD*
 

Russian Silver Repoussé Bogatyr Warriors Vodka Cup
ロシア銀製「ボガトゥイリ(勇士)」ウォッカカップ

Early 20thC Moscow Russia
20世紀初頭 モスクワ ロシア
刻印:KOKOSHNIK(1908-1917、モスクワ、銀純度875)、MT (工房印) 高さ:6.0cm
 
 「ブィリーナ」は古くから民衆の間で口承で語り継がれてきたロシアの英雄叙事詩で、ロシアの民族や国土を守って敵と戦う英雄たちを主人公としている。19世紀に入ってから研究が進み、多くのロシアの芸術家がブィリーナを題材に音楽や絵画を創作した。
 
 この作品は、19世紀中期から好まれたブィリーナからの主題であるボガトゥイリ(中世の勇士)をルプセ技法によって打ち出したウォッカカップである。帝政ロシア時代後期の美術工芸品の特徴でもある木で出来たオリジナルケースに入っている。ロシアのアンティーク作品を扱うロンドンの有名骨董店Wartski の古い説明書付き。
*SOLD*
 

Palais Royal Mother-of-Pearl "Aide Mémoire"
パレ・ロワイヤル白蝶貝備忘録(エド・メモワール)

c1820 Paris France
1820年頃 パリ フランス
刻印なし 7.1cm x 5.0cm 白蝶貝 オルモル 絹 紙
 
 18世紀後期、オルレアン公ルイ・フィリップⅡ世は自宅であったパレ・ロワイヤル中庭の回廊を商店街に改装して民衆に開放した。一時革命の政治拠点ともなったが、帝政時代はパレ・ロワイヤル(王宮)の名にふさわしい高級商店が軒を連ね、世界中から多勢の王侯貴族が従者を引き連れて訪れた。彼らはフランスの力と富に感銘を受け、高級な土産品を買い求めて帰国し、それらの品々は各地で流行の先端となった。
 
 この手帳もそのひとつで、パレ・ロワイヤル作品の特徴であるエナメル・パンジーのメダイヨンの付いた白蝶貝のパネルは "Souvenir"の文字と文様がグラヴュールされ、それを縁取る金色のオルモル(銅と亜鉛の合金)枠は、オリジナルのペンシル上部にまで繊細な打ち出しが施されている。内側はピンク色のシルクサテンでライニングされたノート(紙)とポケットがある。ノートは取り外してレフィルと交換できた模様。
 
 紙のメモ帳をエド・メモワールと呼ぶが、この作品はパレ・ロワイヤルという話題性と高い品質でカルネ・ド・バル(舞踏会の手帖)としても活用されたと思われる。
*SOLD*
 

Embriachi Workshop Bone Panels "Judgement of Paris"
エンブリアキ工房 獣骨パネル「パリスの審判」

15thC Baldassarre degli Embriachi Venice Italy
15世紀 ヴェネツィア イタリア
サインなし 額:14.6cm x 13.7cm  獣骨(カバの牙とも云われる) 象牙 木
 
 初期ルネサンスのヴェネツィアとフィレンツェを拠点に活動したエンブリアキ工房のボーン彫刻作品。額縁は象牙を嵌入した寄木細工となっている。
 
 黄金の林檎を差し出す女神エリスとトロイア王子パリスの前で美を競う3人の女神を描いたギリシア神話「パリスの審判」である。王子パリスが愛の女神ヴィーナスを選んだことからルネサンス期には、多くの女の中で花嫁を選び取った花婿を讃える意味を込め、婚礼の調度品や祝いの品に好んで描かれた主題である。
 
 エンブリアキ工房は婚礼用の匣(美術館所蔵)も製作しており、おそらくこの作品も婚礼祝いとして注文、製作されたものと思われる。
*SOLD*
 

Silver Mounted Mother of Pearl "Carnet de Bal"
白蝶貝の表紙付き舞踏会の手帖(カルネ・ド・バル)

c1880 France
1880年頃 フランス
刻印 : 猪の頭(銀純度800)、AE(工房印) 10.1cm x 6.6cm 白蝶貝 銀 磁器 象牙 絹
 
 映画の題名にもある「舞踏会の手帖」は、貴婦人が舞踏会に持参して踊る相手の名前を曲目ごとに書き留めるための手帖のことである。逢い引きの予定等も記したというこの手帖は、そのドラマ性に加え、着用するローブ・ド・バル(舞踏会用ドレス)や宝飾品に見合うよう細工の凝ったものが多く、欧米では蒐集家も多い。
 
 銀で装飾された愛の使者クピドの陶板を嵌めた白蝶貝の表紙に6枚の象牙の板と小さなペンシルが組み込まれているこの手帖は、象牙板に僅かに筆跡が残っており、百年以上昔の愛の物語を秘めたオブジェとなっている。
*SOLD*