Jewellery〜宝飾品図録41
Russian Art Nouveau 2-Colour Gold Diamond Ring
帝政ロシアアールヌーヴォー2カラーゴールドダイヤモンドリング
1908-17 Moscow Russia
1908-17年 モスクワ ロシア
刻印:56(14金)モスクワを表す刻印、H.∅.(工房印)、ホタテ貝(14金)
ベゼル:2.6cm リングサイズ #13.5
ダイヤモンド ゴールド
帝政ロシアの最盛期と言える19世紀後半、ビザンチン様式に根差す伝統にフランスの芸術様式を取り入れて発展したロシアの宝飾品や金銀細工品は、皇室御用達のファベルジェ工房を中心に隆盛を極めた。国外においてもロシアからの遠来の品はロンドンやパリの上流階級の好奇心をかきたて蒐集することが流行した。
極端なまで縦に長い植物モチーフのロシアのアールヌーヴォーリングである。当時流行していたフランスのアールヌーヴォー曲線をデザインに取り入れ、ロシア鉱山で採掘した良質で厚みのあるオールドカットダイヤモンドを2カラーゴールドの葉の意匠に留めている。フランス作品の軽妙さや洗練とは一味違う質実剛健とさえ言える丁寧で安定したつくりは豊富な貴石や金属を産出できる地理的優位性と長い伝統で培われた芸術分野への職人の真摯な取り組みによるもので、ロシアジュエリーの特徴を示している。大きなダイヤモンド3個を使っているが大胆で個性的なデザインのため案外カジュアルに着用できる。ロマノフ王朝の終焉を見る事なくロシアを去った亡命貴族が生活のため国外で手放したリングかと想像が膨らむ。革命以降ロシアからの美術骨董品の持ち出しは原則禁止のためロシアのアンティークは貴重で市場で人気が高い。
*画像に使用しているケースは付属しません