アンティークブラックフォレスト

Annexe 9【分室9】〜 ブラックフォレスト

Black Forest ブラックフォレスト動物誌

アンティQ【anti-Q】アンティーク・ブラックフォレスト動物誌

 スイスのベルン周辺では18世紀から木彫工芸が盛んでした。のちに4代続く木彫職人Trauffer(トラウファー)一族の初代ピーターが1880年頃、旅行者向けに森に生息する熊などの動物を主題とした家具や小物、鳩時計を製作したことで、スイスの木彫細工は欧米で一挙に有名となりました。このような動物の木彫作品は「ブラックフォレスト(黒い森)」と呼ばれ、スイスのみならずドイツやオーストリアなどでも作られ、20世紀にかけて大変な人気となりました。なお実際の「黒い森(シュヴァルツヴァルト)」はドイツのバイエルン州(旧バイエルン王国)に位置する森林地域の地名です。
 
 アンティQでは19世紀後期から20世紀初頭のアンティークのブラックフォレスト木彫作品を取り扱っています。表情豊かな木製の動物たちはガラス義眼を嵌めたものも多く、手彫りのため二つと同じ顔はありません。掲載作品についての価格や状態、掲載されていない在庫作品につきましては 【CONTACT お問い合わせ】よりお問い合わせください。
 
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Black Forest

アンティークブラックフォレスト図録

Black Forest Carved Wood Cat Head Inkwell
ブラックフォレスト木彫猫頭部インク入れ

 
c1900 Pralognen La Vanoise France
1900年頃 プラローニャン フランス
高さ:8.2cm シナノキ ガラス
 
着色が薄れているが斑を描いた木彫の猫頭部。蓋を開けると中にガラスのインク壺が仕込まれている。猫目のガラス義眼を嵌めた好奇心旺盛な猫の表情が好ましい。首のリボンに記されたPralognen La Vanoiseはスイスやイタリアに程近いフランス南東の山岳地方プラローニャンの土産品であったことを表す。リボン先端に小さな欠けあり。
 

Black Forest Carved Wood Dog Head Inkwell
ブラックフォレスト木彫ボクサー犬頭部インク入れ

c1900 Switzerland
1900年頃 スイス
高さ:7.2cm シナノキ ガラス
 

 
ドイツを中心にマスティフ系の猟犬を改良して19世紀後期に誕生した犬種ボクサー犬は、1900年までに狩猟のみならずドイツ軍や警察においても活用され、この頃の工芸品の意匠に登場するようになった。
 
犬頭部(蓋)を開けると中にガラスのインク壺が仕込まれている。細かな毛並み、鼻や口元と精巧な木彫に、ガラス義眼を嵌めた犬の知的な表情が好ましい。首のリボン先端に修復あり。
 

Black Forest Carved Wood Cat in Boot Grand Inkwell
Black Forest Carved Wood Pug in Boot Inkwell
ブラックフォレスト木彫 ブーツの中の猫特大インク入れ/ブーツの中のパグ犬インク入れ

c1900 Switzerland
1900年頃 スイス
(猫)長さ:19.5cm  高さ:19.3cm
(パグ)長さ:12.5cm 高さ:10.0cm
シナノキ ガラス
 

 

山に囲まれた地域で作られるブラックフォレスト作品において、山仕事用のブーツから頭を出す小動物は親しみのある主題として多く製作された。頭の蓋を開けると中にガラスのインク壺が仕込まれた、猫とパグ犬のインク入れである。
 
片手に乗るパグ犬のインク入れは一般的なサイズであるが、猫目のガラス義眼を嵌めた猫のインク入れは珍しい特大サイズで、靴のつま先が小さな文具や切手を収納できるようになっている。
 
両作品とも頭(=蓋)は明るく、ブーツ(=本体)は暗めの色調で仕上げている。解かれた靴紐や履き古して傷んだ踵やシワのみならず靴底の滑り止めの鋲までも木で彫り出したブーツは圧巻である。
 

Carved Dog Head Ribs Brisé Fan
木彫パグ犬頭部親骨のブリゼ扇子

 

Late 19thC Probably Austria
19世紀後期 おそらくオーストリア
長さ:28.0cm 幅:45.5cm(最大)
チェリー ガラス 金属 絹
 
16世紀大航海時代のオランダに中国から渡ったパグ犬は、オランダ王室に寵愛され繁殖されるようになる。以来ヨーロッパの王侯貴族の愛玩犬として珍重され、愛嬌ある姿は工芸品の意匠としても大変好まれた。
 
パグ犬頭部をかたどったチェリー材の親骨に白木の薄板28橋を重ね作られた扇子である。
 
18世紀以降貴婦人が手に携える扇子は、涼を得るためではなく作法や社交上必要な小道具であり、贅を尽くした工芸品として見せつけるためのファッション小物でもあった。レースや高級材料を使った優雅な扇子とはひと味違う民芸的なブラックフォレストの木彫扇子は大変珍しくユニークな作品である。
 

Black Forest Carved Wood Bear Head Nutcracker
ブラックフォレスト木彫熊頭部クルミ割り

c1900 Switzerland
1900年頃 スイス
長さ:18.5cm シナノキ ガラス
 

 
日本人には馴染み深い北海道の民芸品木彫り熊の発祥は、徳川義親がスイスのベルンから持ち帰ったブラックフォレストの小さな木彫りの熊であった(八雲町木彫り熊資料館所蔵)。ブラックフォレストを代表する熊の作品は、長きに渡り大量生産され、彫りの質も多様であった。
 

毛並みを細かく刻み、鼻や口の中まで精巧に表現した木彫による熊の頭のクルミ割りは、熊の口に挟んだ木の実を割る仕様である。お菓子作りのためにナッツの殻を割る単なる道具ではなく、食後酒を飲りつつ贅沢な時を愉しむためのオブジェである。nutcrackerの和訳は「クルミ割り」ではあるが金属製ではなく木製道具の場合、殻の固い胡桃ではなくチェスナット(栗)などへの使用が望ましい。
 

Black Forest Carved Wood Hare Head Nutcracker
ブラックフォレスト木彫野ウサギ頭部クルミ割り

c1900 St. Claude France
1900年頃 サン=クロード フランス
長さ:21.0cm ST CLAUDEの刻印
シナノキ ガラス
 

 
フランスとスイスの国境ジュラ山脈の峰に囲まれたサン=クロードは森林の木材を使った工芸が盛んで、現在は良質な喫煙パイプ生産で愛好家に有名な地域である。
 

木彫による野ウサギの頭のクルミ割りは、ウサギの口に挟んだ木の実を割る仕様である。お菓子作りのためにナッツの殻を割る単なる道具ではなく、食後酒を飲りつつ贅沢な時を愉しむためのオブジェである。nutcrackerの和訳は「クルミ割り」ではあるが金属製ではなく木製道具の場合、殻の固い胡桃ではなくチェスナット(栗)などへの使用が望ましい。
 

Black Forest Carved Wood Gnome Head Nutcracker
ブラックフォレスト木彫ノーム(地の精)の頭 クルミ割り

Late 19thC Switzerland

19世紀後期 スイス
長さ:15.7cm シナノキ
 

錬金術では四大元素(火・風・水・地)を、象徴や寓喩を用いて四精霊と呼び、地の精霊(ノーム)は地中で生活する老人のような容貌をした小人で表現された。
 
木彫によるユーモラスな小人の頭のクルミ割りは、長く伸びた帽子と髭を握って小人の口に挟んだ木の実を割る仕様となる。小人の帽子内側に修復あり。お菓子作りのためにナッツの殻を割る単なる道具ではなく、食後酒を飲りつつ贅沢な時を愉しむためのオブジェである。nutcrackerの和訳は「クルミ割り」ではあるが金属製ではなく木製道具の場合、殻の固い胡桃ではなくチェスナット(栗)などへの使用が望ましい。

 

Carved Two Egg-Hatching Chicks Small Treen Box
木彫 孵卵する2羽の雛 小箱

Late 19thC Probably Austria

19世紀後期 おそらくオーストリア
9.3 x 6.1 x 6.3cm(雛含む)
ボックスウッド 真鍮 ガラス
 
キリスト教以前から卵は豊穣のシンボルとして宗教儀式に飾られた。また卵から雛が孵ることは、新しい生命の誕生、転じて新しい人生や復活、再生を意味している。キリスト教文化においてはイエス復活の象徴としてイースターエッグを復活祭に飾る習慣となっている。
 
上蓋に卵の殻を破って孵化する2羽の雛の彫刻のついた木製小箱は、滑らかに磨いた卵と、細かく刻んだ生まれたての雛の羽毛の質感の対比が見事な作品である。ボックスウッド(セイヨウツゲ)を細かく彫刻した小品であることから、オーストリア作品と思われる。
 
遠い地で新たな生活をはじめる友へ、または新たな生命を授かった者への贈り物であったのであろうか。
 

過去の作品

Black Forest Carved Wood Dog Pen Tray and Inkwell
ブラックフォレスト木彫犬ペントレイ付きインク入れ

Late 19thC Switzerland

19世紀後期 スイス
幅:25.8cm  高さ:11.8cm
シナノキ ガラス 陶器
 

イギリスで14世紀からウサギ狩りに重宝されたビーグル犬は、猟犬として貴族に大変人気があり、ヴィクトリア時代の工芸品の意匠にしばしば使われた。
 
丸太に両前足を載せたビーグル犬頭部(蓋)を開けると中に陶器のインク壺が仕込まれている。細かな毛並み、鼻や口元、首輪と精巧な木彫に、目力のあるガラス義眼を嵌めた犬の知的な表情が好ましい。片手に乗る一般サイズのインク入れはと違い、ペントレイの付いた存在感のある作品である。点々と青いインクの染みあり、元所有者が相当気に入って使ったと思われる。

*SOLD* 

Carved Dog in Shoe Treen 3-Piece Writing Set
木彫靴の中のパグ文房具3点セット

Late 19thC Probably Austria
19世紀後期 おそらくオーストリア
靴の長さ:18.5cm ボックスウッド ガラス 金属
 
16世紀大航海時代のオランダに中国から渡ったパグ犬は、オランダ王室に寵愛され繁殖されるようになる。以来ヨーロッパの王侯貴族の愛玩犬として珍重され、愛嬌ある姿は工芸品の意匠としても大変好まれた。
 
18世紀貴族の室内履きミュールの中のパグ犬が前足で野鳥を捕らえている、いかにも貴族好みの意匠で質の高いボックスウッド(セイヨウツゲ)作品である。鳥はペン軸、犬の両前足はそれぞれペンシルとナイフが仕込まれている。犬だけでなく鳥まで極小のガラス義眼入りで表情を作り、靴の縫い目などの細部まで丁寧に手彫りしている。格調高い書斎のオブジェである。
*SOLD* 

Black Forest Carved Wood Clothed Bear Pipe Holder
ブラックフォレスト木彫着衣の熊パイプホルダー

Late 19thC Switzerland
19世紀後期 スイス
高さ:28.5cm シナノキ 布 革
 
赤糸でトリミングされた白い木綿シャツに生成りの麻ベスト、黒フェルトのチロリアン帽を身に着けた、擬人化した木彫の熊である。熊の背負い籠にパイプを入れるパイプホルダーとなる。ブラックフォレスト木彫作品で、布の服を着たものは非常に珍しい。熊の右腕は関節で動くが用途は不明。熊の上に向けた目や口を開けた表情がユーモラスに表現されている。
*SOLD*

Black Forest Carved Wood Cat & Hat Inkwell
ブラックフォレスト木彫帽子と猫インク入れ

c1900 Lucern Switzerland
1900年頃 ルツェルン スイス
高さ:11.8cm シナノキ ガラス
 
穴の開いたパナマ帽の天辺から手と顔を出す猫のインク入れ。19世紀半ばゴールドラッシュに湧くカリフォルニアを目指した人々がパナマから持ち帰り、ヨーロッパで広まったパナマ帽は、パナマ草を編んでつくるために繊維が傷つきやすく、やんちゃ猫の餌食になることが多かったのであろう。土台部分に刻まれたLUZERNは、当時ルツェルンの土産品であったことを表す。帽子のつば部分に修復箇所あり。内部のガラス壺が欠損している。
*SOLD*

Black Forest Carved Wood Cat Holding Quill in Mouth Inkwell
ブラックフォレスト木彫羽根ペンをくわえる猫インク入れ

c1900 Geneva Switzerland
1900年頃 ジュネーヴ スイス
高さ:11.8cm ペン長さ:26.6cm シナノキ ガラス
 
木の洞(うろ)から頭を出した猫の蓋を開けると中にガラスのインク壺が仕込まれている。縦に長い瞳孔をもつ猫目のガラス義眼を嵌めた木彫による猫の知的な表情が好ましい。金属製のペン先とペン軸を組み合わせたつけペンは、昔ながらの羽根ペンを木彫りで再現するという、職人の発想が面白い。猫の口からオリジナルのペンが失われていないのは貴重である。猫の鼻や樹皮部分、羽根ペンの模様は彩色が施されている。中央に刻まれたGENEVEは、当時ジュネーヴの土産品であったことを表す。
*SOLD*

Black Forest Carved Wood Dog Nutcracker
French Carved Wood Watch Case
ブラックフォレスト木彫犬クルミ割り
フランス木彫犬懐中時計入れ

Late 19thC Switzerland /France
19世紀後期 スイス/フランス
(クルミ割り)長さ:20.5cm
(時計入れ)8.3 x 5.5 x 3.0cm CHAMONIX+DEPOSEの彫刻
シナノキ ガラス
 
胡桃割りは、犬の頭底部にある穴に木の実を入れ、螺子状の握りを回す仕組みである。動物の口で割るタイプに比べて手のかかる仕様のため数が少ない。懐中時計入れは、犬の顔の蓋を開けると直径3.5cmの時計用の凹みがあり、突出した時計の竜頭部分は箱の外に逃がせるようになっている。両作品とも丁寧に彫られた毛並みとガラス義眼が、生き生きした犬の表情を作っている。
*SOLD*

Black Forest Caved Wood Hat Racks of Fox & Hare as Hunters
ブラックフォレスト木彫猟師に扮した狐とウサギ帽子掛け

Late 19thC Switzerland
19世紀後期 スイス
(狐)29.8cm (ウサギ)28.0cm
シナノキ シャモアの角 ガラス 
 
本来狩られる側の狐とウサギが猟師の姿に扮した帽子掛けである。シャモアの角でブーツを表現している。狐はガラス義眼、ウサギは彫眼のため、元来一対の作品であったかは不明。双方ともに銃口部分に修復有り。
*SOLD*

Carved Wood Devil with Red Glass Eyes Page Turner
赤目の悪魔木彫ページターナー

Late 19thC Probably Germany
19世紀後期 おそらくドイツ
長さ:43.8cm パイン? ガラス
 
ペーパーナイフは元来愛書家が、小口を裁断してないフランス綴じと呼ぶ装幀の書物を一頁ずつ切り開いて読むための道具であり、ページターナーは挿画本など大判の書物の頁を傷つけずにめくるための道具である。後者は大抵ペーパーナイフも兼ねている
 
キリスト教文化が中心の19世紀以前のヨーロッパにおいては、宗教画以外に悪魔の姿をした一般向けの実用道具はさすがに数が少ない。しかし19世紀初めゲーテが『ファウスト』で成功をおさめたことにより、ドイツやオーストリア周辺で魅力的な悪魔メフィストフェレスを扱った作品がつくられるようになる。
*SOLD*