アンティークパイプ

Annexe 4【分室4】〜 メシャムパイプ

Meerschaum Pipe 白き女神 メシャム彫刻のパイプ

アンティQ【anti-Q】白き女神 メシャム彫刻のアンティークパイプ

 メシャム meerschaumはドイツ語で「海の泡」、海泡石(セピオライト)とも呼ばれる鉱物です。黒海の海岸で発見され古くから海の泡が石化したものと考えられていました。白く軟質な質感は「海のヴィーナス」「白き女神」と謳われ、18世紀にオスマン帝国(現トルコ)で原石が産出されるや、たちまち凝った彫刻のメシャムパイプがヨーロッパ貴族を魅了しました。美しい彫刻を愛でつつ、喫煙によってその純白でマットな肌が艶のある深い琥珀色へと変わる過程を愉しむという非常に個人的で贅沢なアイテムです。
 
 アンティQでは19世紀後期から20世紀初頭の精緻でユニークな彫刻の施されたアンティークのメシャムパイプ、葉巻煙草ホルダーを取り扱っています。当店のパイプは当時の革張りのオリジナルケースが付属します。パイプは一点ずつ手彫りされるためそのケースも特別誂えでした。掌にのせられる彫刻芸術をお愉しみ下さい。掲載作品についての価格や状態、掲載されていない在庫作品につきましては【CONTACT お問い合わせ】よりお問い合わせください。
 
 メシャム以外の素材のパイプはこちら、パイプや葉巻関連の小物はこちらにてご紹介しています。
 

Meerschaum Pipe

アンティークメシャムパイプ図録

2 Jockeys Cheroot Holder
二人の騎手葉巻煙草ホルダー

1906 England
1906年 イギリス
 
シャンク:銀 マウスピース:琥珀
パイプ本体:14.0cm ケース:15.0cm
 

 
二人の騎手が乗馬鞭を手にくつろいで語り合う情景を表した煙草ホルダー。味わい深く色づいたダークカラーのメシャムとケース内張のヴェルヴェットのオリーブグリーンが、英国が近代競馬発祥の地であることを想起させる作品である。
 
銀製シャンクは純度950、1906年、バーミンガムを表す英国印とA.Bの工房印。ケースはロンドン東部Walthamstow(ウォルサムストウ)のJ. E. Pedlerのラベルあり。競走馬の馬主で生産者としても名高いエドワード7世の治世に思いを馳せて愉しみたい。
 

Lady Sitting Sideway Cheroot Holder
横座りの女葉巻煙草ホルダー

c1900 Austria
1900年頃 オーストリア
 

 
シャンク:銀 マウスピース:琥珀
パイプ本体:11.2cm ケース:14.0cm
 
髪を下ろしゆったりと足を崩しくつろぐ女性像の煙草ホルダー。女の手指やスカートのシワなど丁寧に刻まれている。喫煙時、空想上で女と会話を交わすも一興である。
 

Lady's Hand Cheroot Holder
貴婦人の手首葉巻煙草ホルダー

c1900 Austria
1900年頃 オーストリア
 
マウスピース:琥珀
パイプ本体:12.3cm ケース:13.8cm
 

 
ボウルを持つ貴婦人の手首の意匠のパイプは一般的で市場に数多く出回っている。ただし手彫り作品はしなやかな女の指の表情、爪や袖のレースやボタンの表現に職人の技量が歴然と出るため、魅力的な手首を選びたい。
 
どの角度からもいつまでも眺めていられる美しい手首のホルダーである。琥珀とメシャムを組み合わせたホルダー部がビールの入ったグラスに見えるユニークな作品。
 

Lady Knitting Cheroot Holder
編み物する女葉巻煙草ホルダー

c1900 Austria
1900年頃 オーストリア
 

 
マウスピース:琥珀
パイプ本体:10.2cm ケース:12.0cm
 
ゆったりした部屋着で手引書を膝に乗せ編み物に励む女性像の煙草ホルダー。編みかけのニットに刺さる何本かの金属の編み棒と女の極小のガラス義眼(右眼のみ、左は欠損)がミニチュア細工の精緻を極めている。喫煙時、楽しげに編み物する女と向き合い空想にふけるも一興である。
 

Caricature General Figure Smoking Pipe
カリカチュア将軍像パイプ

c1900 Austria or France
1900年頃 オーストリアまたはフランス
 

 
マウスピース:エボナイト
パイプ本体:15.0cm ケース:16.5cm
 
二角帽子(ナポレオン帽)を被り杖を持った将軍の姿を風刺的に表現している。大きい鼻に猪のような牙を剥き、舌を突き出した醜い表情は軍位の高い者への皮肉であろう。特定の人物(ナポレオン?)を表しているかは不明。
 
 

Meerschaum Pipe
メシャム以外のアンティークパイプ

Waiting for Arrival(入荷待ち)

Meerschaum Pipe
パイプ、葉巻関連のアンティーク小物

Brass Girl Sitting on Chamber Pot Cigar Cutter
Silver Niello Cigar Cutter
真鍮製おまるに座る少女シガーカッター
銀製ニエロシガーカッター

c1890 England / c1900 Probably Austria
 

コロンブスが大航海時代にカリブ海の島で出会った葉巻煙草(シガー)。南米各地を植民地としたスペインが利益を独占していた葉巻煙草は19世紀初頭、ナポレオン軍の侵攻をきっかけにヨーロッパ各地に広まった。今も昔も贅沢な嗜好品の葉巻を嗜むための喫煙具は凝ったものが多い。
 
(右)1890年頃 イギリス
刻印なし 高さ:3.7cm(丸カン含まず)
おまるに座る裸の少女のフィギュア。フォブとしてウォッチチェーンに吊り下げ、愛煙家仲間に自慢したヴィクトリア時代のノベルティ(目新しく珍しいの意)である。おまるの底に葉巻を差し込みカットする。スチール製Vカット。
 
(左)1900年頃 おそらくオーストリア
刻印なし 長さ:4.0cm
あらかじめ彫り下げた窪みに黒金(硫黄に銀、銅、鉛を加えた合金)を焼き付けて研磨することを繰り返し象嵌効果を生み出すニエロ技法による市松模様のフォブ・カッター。豪華な派手さはないが手間を掛けた贅沢なつくりである。スチール製フラットカット。
 
*(右)SOLD*

Louis Kuppenheim Silver Pfeilring Solingen Double Ended Cigar Cutter
ルイス・クッペンハイム銀製/ファイリング・ゾーリンゲンシガーカッター

c1910 Germany
1910年頃 ドイツ
 
刻印:900、LK(工房印)、判読困難な刻印、フランス輸入印?、ファイリング商標
長さ:19.7cm
 

 
コロンブスが大航海時代にカリブ海の島で出会った葉巻煙草(シガー)。南米各地を植民地としたスペインが利益を独占していた葉巻煙草は19世紀初頭、ナポレオン軍の侵攻をきっかけにヨーロッパ各地に広まった。今も昔も贅沢な嗜好品の葉巻を嗜むための喫煙具は凝ったものが多い。
 
フラットとVカットのダブルエンド、迫力サイズのテーブルシガーカッターである。銀製装身具の分野で歴史を誇るドイツプフォルツハイムで金銀細工師の家業を継いだ有名工房ルイス・クッペンハイム(1891-1982)が銀細工のリブ・パターンを手掛けた高級品。スチールカッターは刃物の生産で有名なゾーリンゲンのファイリング社製である。

 

過去の作品

Sleeping Beauty Set of 3 Cheroot Holders
「まどろみの美女」葉巻煙草ホルダー3本揃い

c1900 Vienna Austria
1900年頃 ウィーン オーストリア
マウスピース:ブライヤー

 
ケースを開けると現れる寝床に横たわる美しい貴婦人。見る角度によって眠る女の目はうっとり薄く開いているのが分かる。上掛けで隠れた女の胸下と両足にそれぞれマウスピース(吸い口)がつく。作品の一部であるレースとシルクサテンの枕と上掛けつきのケース共に良好な状態。 
*SOLD* 

Lady's Bust Churchwarden Pipe
貴婦人胸像チャーチワーデン・パイプ

c1900 Austria
1900年頃 オーストリア
シャンク:銀 マウスピース:獣角
パイプ本体:37.8cm ケース:40.3cm

 

読書や寝そべっての喫煙に重宝する長いステムのパイプをチャーチワーデン・パイプと呼ぶ。教会を夜警する教区委員(ワーデン)が、自分の咥えたパイプの煙で不審者を見逃さぬよう長パイプで喫煙したことに由来する。
 
ブラウスの襟元の首飾りや耳飾りまで丁寧に刻んだ端正な女の胸像のチャーチワーデン・パイプである。長いと破損しやすいとされる接合部(ダボ)の状態も良く、オリジナルケース付きの大変珍しい作品である。女の鼻先に先人が長い年月触れることで生じた「なれ」がある。
*SOLD*

Lady's Hand Smoking Pipe
貴婦人の手首パイプ

c1900 Austria or France
1900年頃 オーストリアまたはフランス
マウスピース:琥珀
パイプ本体:15.3cm ケースなし
 
ボウルを持つ貴婦人の手首の意匠のパイプは一般的で市場に数多く出回っている。ただし手彫り作品はしなやかな女の指の表情、爪や袖のレースやボタンの表現に職人の技量が歴然と出るため、魅力的な手首を選びたい。
 
どの角度からもいつまでも眺めていられる大変美しい手首のパイプである。袖のレースの透かしやボタンホールまで手抜きのない作品。シャンクの琥珀に若干傷みあり。
*SOLD*

Bird on Flower Branch Cheroot Holder
花枝にとまる小鳥葉巻煙草ホルダー

c1900 Probably Austria
1900年頃 おそらくオーストリア
マウスピース:琥珀
 
羽毛まで丁寧に彫刻された小鳥は、極小のガラス義眼が嵌められている。二つの花の中心に嵌められた色の異なる琥珀がアクセントとなっている。
*SOLD*

Lady's Foot in Boot Cheroot Holder
ブーツを着用した女の足 葉巻煙草ホルダー 

c1900 Probably Austria
1900年頃 おそらくオーストリア
シャンク:銀 マウスピース:琥珀
 
ブーツを履いた女の足というフェティッシュなコンパクトサイズの煙草ホルダー。煙草のヤニでこっくりとした琥珀色に変わっている。
*SOLD*

Child on Anchor Cheroot Holder
錨と子ども葉巻煙草ホルダー

c1900 B.B.D Paris France
1900年頃 B.B.D パリ フランス
マウスピース:琥珀
 

キリスト教文化において錨は、魂が荒波に連れ去られないよう神が用意した、安全不動な希望の象徴とされる。花綱の鎖に繋がれた錨に乗る子どもは「希望」を表すと考えられる。錨爪部に極小の欠け有り。
*SOLD*

Pelican Head Cheroot Holder
ペリカン頭部葉巻煙草ホルダー 

1908 T. B. Vinche & Fils Brussels Belgium
1908年 T. B. Vinche & Fils ブリュッセル ベルギー
マウスピース:琥珀
 

後のベルギー国王アルベール皇太子御用達と記されたT. B. Vinche & Fils革ケース入り。ケース内側に表彰の記念品と思われる押印がある。ガラス義眼を嵌め、マウスピースを長い嘴に見立てたペリカンの頭の意匠。キリスト教文化において、ペリカンは自ら胸を傷つけ血を子に与える自己犠牲の象徴。
*SOLD*

Wolf Head Smoking Pipe
狼の頭パイプ

c1900 Alexandre Martin Paris France
1900年頃 Alexandre Martin パリ フランス
マウスピース:琥珀
*SOLD*

 

Lady's Head Smoking Pipe
貴婦人の頭パイプ

c1900 Franz Hiess Vienna Austria
1900年頃 Franz Hiess ウィーン オーストリア
マウスピース:琥珀
*SOLD*
 

Singleton & Cole Ltd. Silver Calabash Smoking Pipe
シングルトン&コール社銀巻きキャラバッシュパイプ

1908 Birmingham England
1908年 バーミンガム イギリス
 
キャラバッシュ(瓢箪)、銀
刻印:純度950、1908年と1910年、バーミンガムを表す英国印、GWS JC(工房印)
マウスピース:ヴァルカナイト?
長さ:16.0cm(ケースなし)
 
シャーロック・ホームズのイラストでお馴染みのキャラバッシュパイプ。1886年設立のSingleton & Cole社は、のちに分割譲渡されるまで英国の煙草産業を牽引した主要な会社のひとつである。煙草のみならず高級喫煙具の製作販売も手掛けた。
 
ボウルに被せた銀の刻印は1908年、シャンクに巻いた銀は1910年でこの年に釣り同好会が贈った記念品であることを手彫りで刻んでいる。ボウルとマウスピース表面にSCB (Singleton Cole Birmingham)の刻印あり。
*SOLD*
 

Carved Wood Baby Ladies' Pipe Set
木彫おくるみの赤子 女性用パイプセット

c1930 Germany or France
1930年頃 ドイツまたはフランス
長さ(ケース):15.5cm
 
第一次世界大戦終結後1920年代のパリ、人々は街に繰り出して平和と自由を謳歌し、古い価値観から解放された女たちは自由と共に新しい女性像を模索し始めた。それまで男性の特権であった人前でのパイプ喫煙は、1920年にアルフレッド・ダンヒル社が女性向けの喫煙パイプを商品カタログで紹介したことで、流行に敏感な女性のファッションのひとつとなった。
 
おくるみに包まれた赤子をかたどった木彫ケースに、マウスピースと交換可能な大小の赤子の頭のボウルを内蔵したパイプのセットである。ノミ跡の残る素朴な木彫りにガラス義眼を嵌めた赤子の無愛想な顔は独特の味わいがあり、マウスピースのエボナイト、牙、ブライヤーのコンビネーションが洒落ている。赤子の意匠とパイプのサイズ感から女性用(当時)であったと判断するが、現代ではアンティークパイプとして男性が使用してもおもしろい。ボウル(小)の赤子の右目ガラス義眼が欠損している。
*SOLD* 

HERMÈS Tusk Silver Pipe Tamper by Ravinet d'Enfert
エルメス/ラヴィネ・ダンフェール獣牙銀製パイプタンパー

c1930 France
1930年頃 フランス
刻印:猪の頭(純度800)、R D(工房印)、HERMÈS PARIS
長さ:10.0cm
 
パイプ愛煙家の必需品タンパーは喫煙の際ボウル内の火種を下方向へ押さえる道具である。螺旋状に彫りを施した獣牙のハンドルにシルバーを組み合わせたヴィンテージ・エルメスのパイプタンパーである。制作は銀工房ラヴィネ・ダンフェールで、単なる道具ではなく質の高さと洗練で喫煙者を満足させる作品である。20世紀半ばのエルメスはパイプを含む喫煙具やその小道具を手掛けているがこの作品は非常に珍しい。
 
19世紀半ばまで遡る歴史を持つパリの銀工房ラヴィネ・ダンフェールは、カトラリーを中心とした銀食器に定評があり数々の万国博覧会で賞を獲得した。1930年代から70年代までエルメスのメゾンで販売する銀や銀メッキ製の文房具や喫煙小物の制作に携わった。エルメスの世界観を象徴する馬やゴルフボール、ロープをモチーフとした彼らの小物作品は、現代でもヴィンテージ・エルメスとして世界中で人気を誇る。ラヴィネ・ダンフェールは1984年に活動を停止、Ercuis(エルキューイ)に吸収される。
*SOLD*

Rosewood "Guillotine" Cigar Cutter
ローズウッド『ギロチン』シガーカッター

c1900 France
1900年頃 フランス
高さ:34.5cm 木 金属
 
フランス革命時、受刑者の苦痛を軽減する人道的配慮を提唱するジョゼフ・ギヨタン博士(Joseph Ignace Guillotin 1738-1814)によって、それまで主流であった絞首刑の代わりに採用された断首装置がギロチンである。フランスでは歴史的に罪人は晒しものとして公開処刑され、民衆にとって処刑見物は娯楽のひとつであった。ギロチン刑が見せ物となった19世紀のフランスでは、席を確保し子連れで見物する者もおり、縮小サイズのギロチンが子ども向け玩具として販売された。
 
ギロチン模型のシガーカッターは、富裕層の間でシガー(葉巻たばこ)が根付く19世紀中期以降多く制作された。この作品は、銘木ローズウッドで土台と柱はもちろん傾斜台と首桶を作り、真鍮とスチールで錘を備えた刃と首枷が作られている。このカッターを前に蒸留酒と葉巻を嗜むフランス紳士の姿を想像しながら、断頭台の露と消えた王妃アントワネットに思いを馳せるも一興のユニークな作品である。
*人形(*SOLD*)は別売りです
*SOLD*