Annexe12【分室12】〜銀食器

German Silverドイツの銀食器小物

 

Silver Basket with Blue Glass Liner by Karl Kurz
Karl Kurz シルバー/ブルーガラステーブルバスケット

c1890 Hanau-Kesselstadt Germany
1890年頃 ケッセルシュタット ハーナウ ドイツ
刻印:フランス輸入印(純度800以上)、工房印
高さ:15.8cm(ハンドル含まず) 幅:15.0cm
 
19世紀後半の欧米では、往時の宮廷文化に憧れる貴族や新興ブルジョワの富裕層に向け古典のリバイバル作品が数多く作られた。ドイツハーナウはそのような銀製品を有力な産業としてフランスなどの市場で成功を収めていた。Karl Kurz工房もそのひとつである。
 
ブルーガラスを仕込んだシルバーバスケットはアンピール風の折衷様式でKarl Kurzでは珍しいデザインである。特に目を惹くスフィンクスは鷲の翼を広げ台座の獅子の足へと繋がっている。両サイドにクピド、透かし細工の豊穣の花綱もユニークである。ハンドルは横に倒すことも中央で真っ直ぐ留めることもできる。包装された小さな菓子を盛ったり花を生けて花瓶のように使っても良い。華やいだテーブルの演出に重宝するアイテムである。
 

 

Silver Plique-à-Jour Enamel Flower PARIS Souvenir Spoon
シルバープリカジュールエナメル「花のパリ」スーべニールスプーン

Early 20thC Probably Germany
20世紀初頭 おそらくドイツ
刻印:900(純度900)、PORTE? D'ALLEMAGNE、R H(工房印)、判読困難な刻印
長さ:12.0cm
 
パリアンヴァリッドのドーム教会"PARIS. DÔME DES INVALIDES."の手描きエナメルをボウルに焼き付けたスーべニールスプーン (土産スプーン)である。アールヌーヴォー曲線を描く花の中央にグリーンの模造宝石(ペースト)を嵌め、淡いフロストカラー(半透明)のプリカジュールエナメル(透胎七宝)を施したスプーン。スーベニール(土産品)と呼ぶには恐ろしく高級で凝った作りで、鑑賞向きに制作されたものである。この作品の作家や工房は不明だが、20世紀初頭のフランス観光地のスーべニールスプーンはドイツ製が多い。フランスのアールヌーヴォー様式を素早く取り入れ多くの作品を市場に送り出していた同時代のドイツ プフォルツハイムのジュエリーと似た作風である。 繊細な細工であるが状態は良好。光を透すエナメル越しに変化する色の表情を楽しみたい。
 

 

Silver "Adam & Eve" Caddy Spoon by Neresheimer & Söhne for Berthold Muller
B. Neresheimer & Söhne シルバー「アダムとイブ」スプーン

c1904 Hamau Germany
1904年頃 ハーナウ ドイツ
刻印:工房印、英国チェスター輸入印、D(1904年)、BM(輸入者)、白鳥(フランス輸入印)
長さ:15.0cm
 
19世紀後半の欧米では、往時の宮廷文化に憧れる貴族や新興ブルジョワの富裕層に向けて古典のリバイバル作品が数多く作られた。ドイツハーナウのNeresheimer & Söhne工房は、ルネサンスやロココ様式の銀製品の復刻に定評があり、品質の高さから国外からの注文も多く輸出によって成功を収めた。この作品もロンドンを拠点として高級銀製品を販売していたBerthold Muller & Son商会が取り扱ったものである。
 
旧約聖書『創世記』の蛇に唆され禁断の果実を食したアダムとイブの姿を立体像で表した圧倒的なハンドルデザインのスプーンである。ボウルは禁断の実、林檎を線彫りしている。この作品は、ルネサンス時代のスプーンを模した鑑賞向き工芸品として制作されたと思われるが、贅沢なキャディスプーンとして使用したい。
 

過去の作品

Parcel-Gilt Silver STRASBOURG Souvenir Spoon
部分鍍金シルバー「ストラスブール」スーべニールスプーン

Early 20thC Germany
20世紀初頭 ドイツ
刻印:三日月と冠、800(純度800)、判読困難な刻印
長さ:12.7cm
 
アルザス地方のシンボルのコウノトリと大聖堂をモチーフにしたフランスストラスブールのスーべニールスプーン (土産スプーン)である。部分的に鍍金を施すことで彫金を際立たせた豪華なコーヒースプーンは、土産品としては大変高級で凝った作りであり、驚くべきことにコウノトリは360度破綻のない立体彫刻となっている。ストラスブールはドイツ国境近くではあるが、20世紀初頭のフランス観光地のスーべニールスプーンは総じてドイツ製が多く見られる。
*SOLD*

 

Silver "Boucher" Cherubs Pierced Bowl by Georg Roth & Co.
Georg Roth & Co. シルバー「ブーシェ」天使文 透かし細工ボウル

Late 19thC Hanau Germany
19世紀後期 ハーナウ ドイツ
刻印:フランス輸入印(純度800以上)、工房印
18.0 x 22.6cm
 
市民革命によってロココや新古典主義といった正統的様式が一時中断していた19世紀後半のフランスでは、生活空間である装飾美術の分野で、ロココ様式を盛んに取り入れるようになる。富裕層である貴族やブルジョワ市民はルイ15世から16世時代の宮廷文化に憧れ、ロココ・リバイバルの作品が数多く作られた。
 
フランス市場に向けたロココ風銀製品を得意とし成功を収めていたハーナウのGeorg Roth工房の作品。18世紀の画家フランソワ・ブーシェ作品のモチーフをデザインに取り入れ細部までこだわったパニエ風の器は、パンや焼き菓子を盛りつけたり、小物やカード置きとしても重宝しそうである。
*SOLD* 

C. Frey & Söhne Silver Tumbler by Koch & Bergfeld
Koch & Bergfeld製作 C. Frey & Söhneシルバー タンブラー

c1875 Bremen Germany
1875年頃 ブレーメン ドイツ
刻印:800(純度800)、工房印、119、C. FREY & SÖHNE
高さ:8.3cm
 
第二次世界大戦までドイツの一部であったヴロツワフ(現ポーランド)の高級貴金属店Carl Frey & Söhneのシルバータンブラー。製作は、1829年ドイツ ブレーメンで創業したKoch & Bergfeldである。彼らは1874年頃から自社製品に番号を振り始め1932年のNo.82056まで続けたとされる。初期の作品No.119のタンブラーは、ルネサンス風の鳥や植物と有翼の女やプットーのレリーフがクラシックで品が良い。
 
口当たりが良く熱伝導率が高い銀製タンブラーは、冷たい飲み物をより冷たく美味しく感じさせる。繊細な装飾文様とともにパーシャルショットなどを味わいたい。工夫次第で冷製デザートも。器中央に所有者の頭文字入り。
*SOLD* 

Silver Tea Ball Infuser
シルバー ティー・ボール・インフューザー

c1900 Germany
1900年頃 ドイツ
刻印:ゾウムシ(フランス輸入印)、判読困難な刻印
高さ:5.2cm(カン、チェーン含まず)
 
茶葉を湯や水に浸してお茶を抽出させる道具、ティー・インフューザー。現代は使い捨てのティーバッグが主流だが、花と果実それを啄む小鳥の打ち出し装飾が見事な、高級感溢れる銀製の卵型インフューザーである。チェーンも刻印入りのシルバーである。蝶番の具合も良く、凹みのない、良い状態である。
*SOLD*