Books〜古書図録09
Heinrich Lossow “Götterdekameron” 1881
ハインリヒ・ロッソウ全12枚組画集『神々のデカメロン』1881年
1881 Hof-Buch- & Kunsthandlung Adolf Ackermann Munich Germany
1881年 Hof-Buch- & Kunsthandlung Adolf Ackermann ミュンヘン ドイツ
32 x 25cm 全12葉+文字頁2葉 ドイツ語
西洋美術における裸婦像(ヌード)はルネサンス以降、性に対して厳格なキリスト教社会の中で女の裸を観たいという男性の欲望に応えるかたちで、芸術家が神話や聖書に題材を見出し、表向きは実在しない理想の女性美を追求するかたちで発展してきた。
しかし19世紀には、18世紀後期のサドやカサノヴァの快楽主義や印刷技術や写真の発達によって、芸術とは言い難いポルノグラフィが巷に氾濫し検閲制度が設けられるに至った。彫刻家を父にもち画力のあるハインリヒ・ロッソウ(1843-97)は、この時代官能的で際どい主題を得意としたドイツ人画家である。
「ヴィーナスとクピド」や「レダと白鳥」等の木炭画を限定印刷(版上サイン)した『神々のデカメロン(十日物語)』は、ロココ絵画のブーシェの画風を真似て古典的に仕上げたロッソウの画集である。検閲を意識してかポルノグラフィのカモフラージュに神話を題材としたかのような女神たちの肉感的な裸体と媚態が興味深い。金の箔押しで装飾されたクピドのメダイヨンの緋色クロスのポートフォリオに収められている。