Miscellaneous〜その他の作品図録31
Boin-Taburet Neoclassical Silver Paper Clip
ボワン=タビュレ 新古典主義シルバー・ペーパークリップ
c1890 France
1890年頃 フランス
刻印:猪の頭(純度800)、G B(工房印)、BOINTABURET A PARIS 53550 17、チェックマーク
長さ:7.4cm
銀 真鍮 ガラス 牙板 セルロイド
市民革命によってロココや新古典主義といった正統的様式が一時中断していた19世紀後半のフランスでは、生活空間である装飾美術の分野で18世紀の様式を盛んに取り入れるようになる。
パリのメゾン、ボワン=タビュレは1873年創業、ルイ15世様式の銀製品ほか小物から家具まで品質の高い18世紀リバイバルの美術工芸品の制作販売で名を馳せた。それぞれの板裏にメゾンの名を刻印した銀板と真鍮板のペーパークリップである。月桂冠をかたどった摘みに、縁取りの溝に白と黒のエナメルを施した銀製の上板は、中央のミニアチュール(細密画)を引き立てるため、当時最新の素材であった赤いセルロイド板を嵌めている。台座の上で香を焚く古代風の女性を白黒のグリザイユ技法で描いた細密画が、ナポレオン帝政の時代を偲ばせる。
デスクやキャビネットの上で季節の挨拶状や夜会の招待状を挟み置き、心に留めておくためのペーパークリップとして申し分のない、贅沢で優美なオブジェである。エナメルに僅かな剥げあり。
*画像のカードは付属しません