Works of Art〜美術工芸品図録34
Silver Running Hare Figure by Richard Comyns
Richard Comyns 「走る野ウサギ」銀細工置物
1977 London England
1977年 ロンドン イギリス
刻印:純度950、1977年、ロンドンを表す英国印、R.C(工房印)、エリザベス女王横顔
長さ:(ウサギ前足から後ろ足)15.3cm (台座)21.0cm
1859年ロンドンの銀細工師William Comynsが起こした会社は、後に二人の息子も参入し社名もWilliam Comyns & Sonsとなる。高品質で幅広い銀製品を世に送り出し、英国銀工房の名門として名を馳せる。息子のRichardは戦後も銀製品の制作を続け、会社自体は買収されたがWilliam Comyns & Sons(Richard Comyns)はロンドンで現在まで続く数少ない高級銀工房の老舗である。
1970年代に作られたRichard Comynsの走る野ウサギの銀製彫像である。室内装飾品にもかかわらず贅沢な純銀製(純度95%)でずっしりと重みがある。走る野ウサギは貴族の往時の愉しみであった遊猟のイメージを喚起し20世紀も富裕層に好まれた主題である。伝統を誇る職人の手仕事によって生み出された、走るウサギの躍動的な筋肉や骨格、流れるような毛並みが見どころである。全身隈なく毛彫りを施されたマットな質感のウサギは、丸い瞳だけがつるりと磨かれ光を映して生き生きと輝く。グリーンオニキスの台座は高級感がある一方で草の茂った野原を想像させる、洒落た組み合わせである。