Paintings〜絵画図録35
17thC French School Oil Painting on Copper "Virgin Mary"
17世紀フランス派銅板油彩画「聖母マリア」
Late 17thC France
17世紀後期 フランス
署名なし 金彩木彫額
イメージサイズ:21.3 x 15.0cm 額:24.3 x 18.0cm
金属のプレス加工技術の発達にともない、銅板は油彩画の支持体として17世紀から頻繁に使用されるようになる。薄くて軽い銅板は木板やキャンバスに比べ持ち運びが容易なため、宗教画として海を渡る宣教師が特に好んで布教活動に活用した。 一方銅板の油彩画は小さな衝撃で歪みやへこみができるとそこから顔料が剥落する欠点があり、損傷や修復の少ないアンティーク作品は極めて稀となる。
漆黒の暗い背景から浮かび上がる聖母と金の光背そして彼女を取り巻くラテン語が、劇的な印象を与えるフランス作品である。
Fili, quid fecisti nobis sic?
Ecce ego et pater tuus dolentes quaerebamus te.
息子よ、なぜ私たちにこんな事をしたのですか
ご覧なさい、お父さまも私も心配して貴方を捜していたのです
ルカによる福音書2章48節、聖母マリアが我が子イエスにかけた言葉である。満足な照明の無い17世紀、蝋燭の光が映し出す金色の言葉の煌めきは、穏やかな笑みを湛えた聖母の表情とともに見る者に子を慈しむ母親の心を喚起させたであろう。折れたような横線2本あり。