Paintings〜絵画図録36
French Empire Silk Embroidered Mourning Picture
フランス帝政モーニング(追悼)シルク刺繍画
Early 19thC France
19世紀初頭 フランス
署名なし 黒塗木製額(オリジナル)
イメージサイズ(ガラス絵含む):24.0 x 26.5cm 額:33.2 x 35.7cm
18世紀末から19世紀初めヨーロッパの芸術分野では、精神的な内面、自然や神秘的なものを表現するロマン主義が、理性、秩序、調和を重んじる古典主義や合理主義に対抗して台頭し、個人の感性や情緒を大切にするセンチメンタリズムがひとつの思潮となった。
そのような時代性を反映したフランス帝政期のモーニング(故人を偲ぶ)の刺繍画である。様々な色や太さの糸を使い、シェニール刺繍などの様々なステッチ(部分的に手描き)で愛犬を連れ湖畔の墓に花を供える少女を描いている。良い風合いに退色した天然染料が2世紀という時間の経過を物語る。下地のシルクや刺繍は概ね良い状態で、大切に残されてきた作品であることが窺える。
額装はマットの代わりにガラス裏面から金箔を張り黒色で仕上げたガラス絵 verre églomisé エグロミゼ技法が使われている。古い宗教装飾に使用された技法であったが、18世紀にフランスの室内装飾の分野で見直され19世紀にかけて人気を博した。黒塗り額に黒いガラス絵の楕円の縁取りは、追悼を表すと同時に刺繍画の穏やかな色彩を引き立てている。