Jewellery〜宝飾品図録22

NapoleonⅢ Gold /Silver Diamond Poison Ring
ナポレオンⅢ ゴールド/シルバー ダイヤモンド ポイズンリング


c1850 France
1850年頃 フランス
刻印なし ベゼル:2.0cm リングサイズ #15 ダイヤモンド ゴールド 銀
 
 ルネサンス期のイタリアに突如現れ繁栄を極めた貴族、悪名高きボルジア家のロドリーゴ(後のローマ教皇アレクサンデルⅥ世)の美貌の娘ルクレツィアは、一族秘伝の毒薬カンタレラを中空の指輪に仕込み、政敵の酒杯に毒を盛ったと伝えられる。
 
 本来毒薬を忍ばせる「ポイズンリング」は、時代が下るにつれて、香料(気付け薬)、遺髪などの形見やミニアチュール(肖像画)を仕込むロケットリングへと目的を変える。しかし今も変わらぬ呼称は、ポイズン=毒薬というドラマティックな言葉が女性を魅了するからに他ならない。
 
 2色のゴールドと銀の彫金細工とローズカットダイヤモンドを嵌めた花の意匠のポイズンリングは、ベゼル側面に蝶番がある多くのポイズン(ロケット)リングとは違い、ベゼル両側を閂(Locking Bar)が貫く珍しい仕様である。このつくりは、機能的に開閉し難い代わりにベゼル部のデザインに影響を与えず、着用する指輪としての美しさを獲得している。
 
 このリングは安易に開閉できない仕様であり、本来の目的である毒薬用と推察できる。所有者はいざという時、自決用に仕込んだ毒薬を歯でこじ開けて服毒する覚悟を持つ誇り高い貴婦人または若く潔癖な令嬢であったと想像せずにはいられない。
 
*画像に使用しているケースは付属しません