Miscellaneous〜その他の作品図録13
L. Mathieu Travelling Surgical Instrument Set
L. Mathieu携帯用外科手術道具セット
Mid 19thC France
19世紀中期 フランス
ケース(閉じた状態):16 x 7 cm
INSTts de CHIRURGIE L. MATHIEU 28, R de l'Anc ne Comédie PARIS(ケースに金の箔押し)
上等な革ケースに外科手術の道具一式を納めたL. Mathieuの携帯用または旅行用のセット。L. Mathieuは19世紀フランスのパリでルイ=ジョセフ・マチュー(Louis-Joseph Mathieu)が起こした医療器具メーカーである。
手術道具として機能的に重要な刃物や鉗子はスチールまたはステンレス(?)製であるが、折りたたみのメスの鞘は艶やかなべっ甲、革ケースは18世紀以降ヨーロッパで最高級とされたロシア革に金のエンボス、ヴェルヴェットとモワレサテンの絹地の内張と、随所に工芸的に上等な素材を使ってコンパクトに仕立てている。第二帝政期の医学に通じた注文主の嗜好を満足させるために制作されたもので、煎茶道具一式を納める提籠にも共通する贅沢な趣味性を感じさせる。
道具13点全てが揃っている。医療器具ではあるが時を経た工芸品として見ても大変に美しい。メスの一部に刃こぼれ、欠け、サビ、べっ甲に僅かな虫喰いあり。欧米では19世紀の医療関係のメディカル・アンティークは蒐集家に人気が高く、この作品は中でもトップクラスのものと言える。