Others〜その他の作品図録22

French Memorial Altar Box
フランス箱型追悼祭壇


Late 19thC France
19世紀後期 フランス
高さ:18.5cm
 
 故人の毛髪を形見として今は亡き人が生きていた証とする慣習は多くの文化圏で見られる。特に細く柔らかい髪質の人種が多いヨーロッパでは、18世紀の北欧を起源として毛髪自体を細工する工芸の域にまで高めた。それらは毛髪細工(ヘアワーク)と呼ばれ19世紀欧米では、遺髪でモーニング(追悼の)ジュエリーに仕立てて身に着けたり、リース(花環)を作って額装し部屋に飾ったりして故人を偲んだ。
 
 手作りの小さな赤い箱型の祭壇は、様々な素材やメッセージで飾った亡き子の写真と遺髪を封じ込めている。写真がまだ珍しくて高価であった当時、子どもの遺影が残された稀な例であり、遺族が愛する我が子の姿を永遠に残して死を悼むために作った品である。"EGO SUM ANGLUS DOMINI"主の御使いとなった男児、"PAX(平和)"の上に貼られた小さな母親の写真が、息子の旅立ちを見守るかのようである。
 
 かつてのスペイン植民地ペルーやメキシコの箱型祭壇「レタブロ」から着想したと思われる遺物箱であるが、19世紀のフランス製では珍しい手法である。素材を立体的に貼付けて額装する現代アーティストのアッサンブラージュ作品を彷彿させるユニークな珍品である。