Works of Art〜美術工芸品図録02

Daum Nancy "Watteau" Lovers Glass Box & Cover
ドーム ナンシー「ワトー」恋人文ガラス蓋物


c1890 Nancy France
1890年頃 ナンシー フランス
サイン : DAUM≠NANCY
高さ:2.7cm 直径:7.0cm
 
 市民革命によってロココや新古典主義などの正統的様式が一時中断していた19世紀後半のフランスでは、生活空間である装飾美術の分野でネオロココ様式が流行する。18世紀のロココ趣味に強い憧れを抱く貴族や新興ブルジョワのために、多くのリバイバル作品が作られた。画家アントワーヌ・ワトー(1684-1721)が描いた絵画作品に見られる宮廷の恋人たちの主題は「ワトー」風と呼ばれ大変人気があった。
 
 無色透明なガラスにジヴレ(酸の腐蝕作用でガラス表面を荒らし霧氷模様をつけること)を施し、酸化腐食彫りした上に黒エナメル(グリザイユ)で「ワトー」風の恋人たちを細密に手描きした円形蓋物である。金彩装飾の植物文が優雅さを強調している。
 
 19世紀末、格式張った保守的富裕層と対極の新しい芸術運動「アールヌーヴォー」の旗手であったドーム工房にしては珍しい、古典的主題の作品である。