Works of Art〜美術工芸品図録21

Carved Ivory ‘Memento Mori' Rosary Bead
象牙彫刻「メメントモリ」ロザリオ・ビーズ


Early 18hC South Germany or France
18世紀初頭 南ドイツまたはフランス
サインなし 高さ:3.4cm
 
 カトリック教会における聖母マリアへの祈りとその際に用いる数珠状の道具を、薔薇の冠を意味する「ロザリオ」と呼ぶ。アヴェ・マリアと繰り返し唱えキリストの主な出来事を黙想するロザリオの祈りは、祈り方=珠の数え方が定められ、使用するロザリオも珠の数や形状が決められている。
 
 「メメントモリ」は「自分が死ぬことを常に忘れずに(今を生きよ)」という人生の警句で、古代には「今この瞬間を楽しめ」という趣旨で解釈されたが、中世以降のキリスト教文化圏では死後の魂の救済を説く上で「現世の儚さ、空しさ」が強調され、16~17世紀には死を象徴する意匠が流行し、ロザリオ・ビーズにも使われた。
 
 上下に紐通し穴のある、3cm以上サイズの、荊冠を被ったキリストと髑髏のダブルフェイスの「メメントモリ」ビーズは、聖職者のロザリオ用であったと思われる。このタイプのビーズは、珍品というほど稀少アイテムではないが、時代が古く大き目の作品は市場に出ることが少なく、この作品のようにキリストと髑髏、両面の顔立ちが良いものは珍しい。
 
 キリストの鼻先に欠けあり。