CabinetⅢ 【第Ⅲ室】〜Works of Art 美術工芸品
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Works of Art〜美術工芸品図録22

Japanese Carved Ivory OKIMONO Skull with Coiled Snake
明治牙彫置物「野晒しにとぐろを巻く蛇」


Late 19thC (Meiji) Japan
19世紀後期 明治時代 日本
刻銘なし 高さ:5.5cm
 
日本における象牙細工は江戸時代、根付や三味線の撥(ばち)の需要とともに工芸品としての高まりを見せる。しかし明治維新で日本人の生活が西洋化し、着物から洋服へと変わったことで根付の需要は減少し、彫刻職人は失業の危機を迎える。 一方、1873年(明治6年)のウィーン万博以降、日本の象牙細工は欧米で高く評価され、象牙工芸品の輸出が増加する。職を失った根付職人たちはその卓越した技術で欧米輸出向け象牙工芸品の制作に方向転換する。
 
この象牙彫刻もヨーロッパ向けに製作された、下顎のない野晒しの髑髏である。行き倒れの遺骸を日常的に目にした江戸の人々は、着物や持ち物に野晒しの意匠を好み、「今生これきり」と心に刻んで身に付けた。西洋の「メメント・モリ(死を想え)」と同じ思想である。明治に入り、人体骨格を学んだ彫刻家旭玉山が発表した「牙彫髑髏」が高く評価されるや、職人らは蜥蜴や蛇など小動物に荒らされた精巧な野晒しの置物を制作、欧米人に大層好まれた。 この作品は、リアルさの追求というより、意匠化した蛇の渦巻き表現などの洗練されたデザインが特徴である。