Works of Art〜美術工芸品図録39
Silver Putto Holding Coral Branchs
枝珊瑚を携える銀製プットー像
Late 19thC Probably Italy
19世紀後期 おそらくイタリア
刻印なし 高さ(子ども):14cm
「邪眼(evil eye)」は、悪意を以て相手を見ることでその者に不幸または死をもたらす目のことで、呪いのひとつである。世界に広く分布する迷信であるが、古代よりヨーロッパでは地中海周辺での信仰が深い。メドゥーサが退治された時に海に散った血が赤い珊瑚となったという神話から珊瑚は魔除けの意味を持ち、ハプスブルグ家支配下の17世紀スペインで王室の子どもはお守りとして身に着けた。
地中海珊瑚の枝を入れたバスケットを差し出す銀製プットー(裸体の幼児の姿をした天使)のフィギュアである。自然が産んだ燃え上がる火炎のごとき枝ぶりの珊瑚と無表情な銀細工の子どものメタリックな質感の対比が驚異の部屋(ヴンダーカマー)に通ずる博物学的な佇まいを見せる。大航海時代のヨーロッパでは、異国の動植物の標本や巨大な巻貝や卵を貴金属で装飾し珍奇なる遠来の品として蒐集し部屋を飾ることが王侯貴族の間で流行し、特にそれらを陳列した部屋を驚異の部屋と呼んだ。またヨーロッパにおいて魔除けである珊瑚は装飾品としてつとに好まれ現在に至る。 なお現在地中海からの珊瑚の産出は汚染により激減しているため大変貴重である。シルバー台座の小さなモチーフひとつが欠損している。